一般社団法人里山デザインの代表、國松繁樹さんは名の知れたデザイナーだ。企業広告が専門でグッドデザイン賞など数々の賞を受賞してきた。劇団四季のデザインも担当しており電車の吊り広告を目にした方も多いだろう。受賞時に携わった森や酪農の「本物の力」に感銘し東京を脱出した。知人の田んぼで田植えや稲刈りをして自然を見直しているうちにこの京北の地に辿り着いた。
そして気が付いたら京北の仲間たちに囲まれていた。商工会や京都市も応援してくれている。地域には木工やガラス工芸の作家の工房が多数あり、当日も教諭に引率された地元の高校生が夏休みを利用して20年前に移住してきた老夫婦にガラス細工を学んでいる。ここには自然や昔ながらの生活がある。すべてがインバウンドの資源となるのだ。その埋もれた資源を発掘してブランディングをするのが國松さんの本領である。太田さんはじめ若いスタッフも全国のいろいろなところから自然に集まってきた。しかしながら方向はぶれていない。
太田さんは「まず、林業の町として基盤を確立しなければなりません。木材の需要が減り、価格が低迷しているなか後継者不足は深刻になっています。木材本来の需要を取り戻すことが一番重要です。基本がなければ副産物の木屑や加工用木材などの活用がすべて無駄になってしまいます。」と冷静に分析している。
そんな仲間たちと「KEIHOKU Style(京北スタイル)」という団体を立ち上げた。京都市や商工会、里山デザインの3者が集まって協議会をつくり国や企業に働きかけ、地元の宣伝や観光客の誘致に力を入れている。國松さんはそのトップに立ち、不思議なリーダーシップで若いスタッフや地域の人々をまとめあげているのだ。地方創生の新たな可能性を感じさせる視察となった。