2026年度 中小企業・小規模事業者の存続と発展を目指して 「国への要望書」

2026年08月01日 ティグレ連合会

目次

Ⅰ.はじめに

 ティグレは、中小企業・小規模事業者(フリーランス含む、以下「小規模事業者等」)とそこで働く従業員、家族の「いのちとくらしをまもる」ことを理念とし、平和・人権・福祉・環境を大切にした真に豊かな活力のある社会の発展に寄与することを目的に1973年に創立しました。現在、様々な業種の事業者が集う全国約三万者の組織です。

 今日、人々が幸せに生活するうえで不可欠な「平和・人権・福祉・環境」はかつてない危機に瀕しています。ウクライナや中東をはじめとする世界各地での武力衝突とそれに伴う大国の覇権主義の台頭は、国際社会の緊張を極限まで高めています。

 また、世界は従来のイデオロギーによる「左右の対立」から、富の偏在による「上下の分断」へ拡大しています。一部の巨大資本や富裕層へ富が集中する一方で、一般市民が置き去りにされる構造は、社会の連帯を阻害しています。左右の対立を煽ることによって「上下の分断」に対する批判の矛先をそらしているとの指摘もあります。

 また、この社会の上下の分断をさらに深刻化させているのが、地球規模の気候崩壊への危機(豪雨、洪水、山火事、熱波、食料危機など)です。わずかの富める強者が優雅な生活水準を維持し続ける一方で、多くの環境弱者や難民は、「気候ファシズム」の暴風に巻き込まれ、生活崩壊や飢餓、貧困の悪化に直面しています。環境・社会の崩壊を前に、命が選別されるという最悪のシナリオも懸念されるところです。このような世界情勢を転換すべく、我が国は国際法の遵守と平和主義を堅持し、誰もが納得できる環境対策で世界をリードすべきです。

 国内における格差拡大も看過できません。経済的な理由から「子供を産めない」だけでなく、「結婚したいという希望すら持てない」のが実情です。将来への希望や選択肢が奪われている現役世代の苦境は、少子化をさらに加速させています。今こそ国民一人ひとりが国づくりの主権者として主体的に関わることが求められており、政治無関心を生みだしている年末調整制度を見直し、全員確定申告により主権者の権利や責任を認識することが重要だと考えます。そのためには、「納税者権利憲章」を制定し、国民一人ひとりが主権者として権利と責任をもって国の運営に参画することから取り組むべきだと考えます。

 さらに、急速に進むデジタル化においては、効率至上主義に偏ることなく、情報弱者や小規模事業者を置き去りにしない「デジタル化についていけない人々を取り残さない」、丁寧な「並走型」の支援策をあわせて講じることを強く要望いたします。

 結びに、2026年度は継続事項も含め、59項目の具体的な政策要望を提出いたします。中小企業・小規模事業者等が直面している切実な課題をご認識いただき、政策への速やかな反映を切に要望申し上げます。

Ⅱ.申告納税制度に関する要望

1.納税者権利憲章の制定を求めます。
 我が国の税務行政において、公正公平な税の実現と、納税者たる国民の自発的な納税義務の履行(申告納税制度の根幹)を両立させるためには、税務当局と納税者との間の高い信頼関係が不可欠です。「納税者権利憲章」の制定は、税務行政への信頼向上および自発的な納税意識の向上という好循環をもたらすものと確信いたします。
 主要先進国(OECD 諸国)では、すでに「納税者権利憲章」が法制化または宣言として採択されており、国際的なスタンダードとなっています。本来、主権者であり納税者たる国民は尊重される存在であり、単なる「義務の履行者」としてではなく、国の運営を支える「主権者」として丁重に扱う姿勢が求められ、また保障されるべきです。しかし現行の「国税通則法」に定められている国民の権利・利益を守る仕組みは手続き論的なものにとどまっており、国にお願いするような内容にすぎません。
 こうした中、令和7年3月には衆議院において「所得税法等の一部を改正する法律案に対する付帯決議」が採択され、その中で「税務行政において納税者の権利利益の保護を図り、税務行政に対する国民の信頼醸成や適正を確保するため、納税者権利憲章の制定を含め納税環境整備について検討を行い、その実現に努めること」と明記されました。
 当会は、この付帯決議を単なる採択で終わらせることなく、一刻も早く実効性のある「納税者権利憲章」の制定まで行うことを強く求めます。とりわけ、現在の日本社会が直面する「少子化問題」と「格差問題」という喫緊の課題に対し、税の負担と配分を国民が一丸となって真剣に検討するためにも、主権者が自らの権利と責任を認識できる環境を今こそ創り上げなければなりません。
 日本においても、納税者の権利と義務の双方を分かりやすく明記した「納税者権利憲章」の策定を求め、以下の3つの柱を基本理念として掲げることを要望いたします。

【要望の3大柱と具体的施策】
1)主権者たる納税者が善良なる者として取り扱われること、および権利保護組織の 設置
◆「納税者権利保護官」の各税務署への配置…納税者が直接、権利保障に関する問い合わせや相談を行える専門窓口として機能させます。
◆「納税者権利保護諮問会」などの組織設置…納税者の権利を客観的に保護・評価するための諮問機関を設置することを求めます。

2)適正手続きの保障、および独立した第三者機関による公正な権利救済
◆税務調査における事前通知の改善…現行の口頭のみによる事前通知は内容の十分な理解が困難であり、準備不足等による調査への支障を招く恐れがあります。そのため、書面等による通知への改善を求めます。また、無予告で税務調査を行う場合には、事前通知を行わなかった理由の開示を常に義務付けることを求めます。
◆国税不服審判所の公平性の確保…現在の国税不服審判所は大多数を国税職員が占めており、独立した第三者機関とは言い難い現状があります。外部の有識者を積極的にメンバーへ登用し、真に公平な権利救済がなされる仕組みへと是正することを求めます。

3)租税の公平合理の維持、および基礎控除額の定期的な見直し制度化
◆2年ごとの基礎控除額見直しの制度化…政治的要望に左右されることなく、社会情勢や物価水準、国民生活の実態に応じて、制度的・自動的に基礎控除額を変更する仕組みを構築します。これにより、常に国民の「健康で文化的な最低限の生活を営む権利(生存権)」を確実に守る税制を目指します。

 本要望事項を盛り込んだ「納税者権利憲章」を早期に制定し、主権者たる国民が正しい権利を自覚しながら、より良き納税者として社会を支える税制の実現を、ここに強く要望いたします。

2.災害関連条文の恒久化および前年繰戻し適用の法制化を求めます。
 自然災害の多い日本列島では、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、さらには各地の豪雨災害など、毎年のように大規模な自然災害が発生しています。
 令和6年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」の際には、多くの人々が被災・避難されたことから、申告・納付期限の延長に加え、所得税法の雑損控除や災害減免法の税金軽減免除規定を「災害発生の前年である令和5年分においても適用を認める」という特例措置がとられました。しかし、この措置は災害が発生する都度、国会審議を経て個別の「特例法(特別立法)」を制定することで執行されており、迅速な救済へのタイムラグや立法コストが課題となっています。

 現行の所得税法第72条(雑損控除)は、「災害等による損失が生じた場合において、その年分の総所得金額等から控除する」と規定されており、原則として「災害の発生した年」の所得からの控除しか認められていません。しかし、能登半島地震のように、年分が始まってすぐ(年初や前半)に大規模な災害が発生した場合、被災により事業の継続や勤務先での就労が困難になり、あるいは居住者本人が亡くなられるなどして、その年(災害発生年)の所得自体が消失または著しく減少してしまうケースが多々あります。課税される所得そのものが発生しなければ、現行法の「その年の所得から控除する」という仕組みでは、被災者は雑損控除や災害減免法による税制上の救済を十分に受けることができず、制度の救済主旨が大きく損なわれることになります。
 日本の税制において、法人税法では企業が赤字(欠損金)を出した際、前年度の黒字と相殺して既に納めた税金の還付を受けることができる「欠損金の繰戻しによる還付(法人税法第80条)」という恒久的な制度が既に確立されています。これに対し、個人の被災者を救済する所得税法において、大規模災害時の前年への繰戻し適用が、その都度の特別立法(特例法)に委ねられている現状は、バランスを欠いていると言わざるを得ません。事業者(法人)の損失に対して恒久法での繰戻し救済が認められているのであれば、個人の生活基盤を直撃する大規模自然災害の損失に対しても、同様の恒久的な繰戻し救済措置が講じられるべきです。

 したがって、今後の予期せぬ大規模災害に対して被災者を迅速かつ確実に救済するため、以下の通り所得税法の恒久的な改正を求めます。所得税法第72条第1項本文に「ただし、その災害が法定申告期限までに発生し、激甚災害に指定された場合には、その災害が発生した前年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除できることとする」との但し書きを追加すること。もしくは、激甚災害による被害を受けた場合には、法人税法の繰戻し還付制度に倣い、損失額を前年以前の所得に繰り戻して適用し、過年分として納税済みの税額から迅速に還付を受けられる恒久的な規定を創設すること。これにより、災害の都度特別立法を待つことなく、雑損控除等の救済の趣旨が最大限に生かされる体制を整えるべきだと考えます。

3.インボイス制度の凍結・廃止及び経過措置の見直し及び恒久化を求めます。
 インボイス制度の運用が続く中、多くの中小企業や個人事業主が事業存続の危機に瀕しています。我々は、本制度が実質的な「社会的弱者への増税」であり、日本経済の衰退を招くものであると考え、強く反対の意見を表明いたします。

1)インボイス制度の凍結・廃止
 インボイス制度は、益税の解消や複数税率への対応、正常な多段階累積控除の実現を大義名分としていますが、その実態は、これまで制度的に守られていた年間売上高1,000万円以下の小規模事業者から強制的に税を徴収する仕組みです。課税事業者は、免税事業者との取引では仕入税額控除を行えないことから、サプライチェーン全体において取引価格の引き下げ圧力や取引排除の動きが常態化しています。これらの対策として、直近では中小受託取引適正化法(取適法)で価格協議の義務化などが追加されました。しかしながら現実には、元請企業から「インボイス登録しなければ次の現場は発注できない」と迫られたり「インボイス登録しなければ外注費のうち消費税相当額を引き下げる」と一方的に通告されたりすることが多く、「課税事業者となって消費税を納めるか」あるいは「商品やサービスの価格を消費税分引き下げるか」の二者択一を迫られています。小規模事業者は少数の得意先に依存していることが多く、取引から排除された際のリスクが極めて大きいため、やむを得ず利益の一部を放棄し、実質的な増税を受け入れている状況にあるのです。
 税制改革法10条2項では「消費税は、事業者による商品の販売、役務の提供等の各段階において課税し、経済に対する中立性を確保するため、課税の累積を排除する方式によるもの」と規定されています。消費税は課税の累積を排除すべき間接税であり、仕入税額控除を前提とした制度であったはずですが、インボイス制度により免税事業者との取引では仕入税額控除を行うことができなくなりました。正常な多段階累積控除の実現は、取適法に追加された価格協議の義務化などのセーフティネットが十分に機能していることを確認した後になされるべきです。
 また、消費税は導入以来、小規模事業者の納税事務負担に配慮してきました(免税点制度・簡易課税制度など)。しかし、インボイス制度が納税事務負担を著しく増加させるものであることは、日税連を始め広く指摘されているところであります。インボイス制度導入直前の令和5年9月に民間会社が発表した調査レポートでは、インボイス対応の追加業務によって、日本全体で毎月約3,413 億円のコストが発生すると試算されました。小規模事業者はこれらのコストを負担するのみならず、乏しい経営資源を納税事務に割かれることで益々競争劣位となっているのが現状です。これらを踏まえ、我々はインボイス制度の凍結・廃止を強く求めます。

2)経過措置の見直し及び恒久化
 インボイス制度による激変緩和措置として、納付税額を売上税額の2割とすることができる「2割特例」や、免税事業者から行った課税仕入れにつき、その一定割合を控除できる「8割控除」、1万円未満の取引についてインボイス不要とする「少額特例」などの制度がありましたが、そのうち「2割特例」と「8割控除」は令和8年10月1日を境にそれぞれ「3割特例」「7割控除」となる改正が予定されています。また、3割特例については個人事業者のみが対象となり、法人は対象外となってしまいました。これらの改正を見直し、現行の「2割特例」と「8割控除」を継続することを求めます。また、インボイス制度が凍結・廃止されるまでの期間は「少額特例」を含めた経過措置の恒久化を強く求めます。さらに前項記載のインボイス対応によるコスト増について、給付等による支援を求めます。

4.消費税率を一律5%に引き下げることを強く求めます。
 我が国の雇用の大半を支え、地域経済の基盤である小規模事業者の経営危機を打開するため、現行のインボイス制度および複数税率を廃止し、消費税率を当面の間、一律5%の単一税率へと引き下げることを強く求めます。また、それに伴う不足財源については税の「応能負担原則」に基づき、法人税・所得税(金融所得課税を含む)の構造改革および徹底した歳出削減によって確保し、持続可能で公平な所得再配分機能の復活を強く要望いたします。

 現在、小規模事業者は軽減税率に端を発するインボイス制度(適格請求書保存方式)の導入により、極めて過大な事務負担と実質的な増税に直面しています。そもそもインボイス制度は、複数税率下における税額管理を名目に導入された経緯があります。したがって消費税率を当面の間、一律5%の「単一税率」へと引き下げれば、インボイス制度を維持する論拠は喪失します。複雑化した税制を単一税率へと回帰させることは、事業者の過度なコスト負担を解消するだけでなく、国税当局の徴収・管理コストをも劇的に低減させ、国全体における「真の税制簡素化」と行政効率化をもたらすものです。
 長期化する物価高騰とコストプッシュ型のインフレにより、小規模事業者は原材料費やエネルギー価格の上昇分を取引価格へ転嫁できず、利益率の著しい低下に苦しんでいます。多くの小規模事業者が、自らの生活費や雇用維持のために身銭を切って消費税を国に納付しているのが冷徹な実態です。消費税は、所得の低い層や経営体力の弱い事業者ほど負担が重くなる「逆進性」が極めて強い税制です。地域経済の担い手である小規模事業者が崩壊すれば、地域コミュニティや我が国の雇用そのものが失われます。これらを踏まえ、最優先すべき経済対策として、消費税の一律5%減税による強力な下支えを実施されるよう強く求めます。

 消費税減税に伴う不足財源については、担税力(税を負担する能力)に応じた抜本的な税制改革と、徹底した歳出削減によって十分に補填可能です。社会のセーフティネットを維持し、真の「相互扶助」を体現するため、消費税という弱者負担の税制から、担税力のある主体から徴収する所得税・法人税を中心とした税制へのパラダイムシフトを強く要望いたします。地域経済の現場を支える小規模事業者の声に真摯に耳を傾けていただき、これからの重要政策として本提言を採用されるよう、切に要望いたします。

5.消費税簡易課税制度選択届出書の提出期限の見直しを求めます。
 消費税法第37条第1項では、簡易課税制度の適用を受ける場合、原則としてその課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しなければならないと規定されています。本制度は、中小事業者の事務負担を軽減するための特例であり「事前の税額シミュレーションによる損得勘定(租税回避行為)に基づく選択を排除する」という趣旨から、事前届出制が採用されていると承知しております。
 しかしながら、現行の「課税期間の初日の前日」という期限は、前期間の決算・確定申告の手続き(個人事業者の場合は3月31日、法人の場合は決算から2ヵ月経過日)よりも前に到来します。そのため、事業者が前期の業績や自社の経営状況を正確に把握・確定させる前に、翌期の課税方式を決断せざるを得ないという実務上の弊害が生じています。
 仮に、同届出書の提出期限を「前課税期間の申告期限」まで緩和したとしても、当該課税期間の初期の数ヵ月が経過したに過ぎず、通期の税額を意図的に操作・計算することは困難です。したがって「損得計算による選択を排除する」という制度本来の趣旨を損なうことはありません。
 以上のことから、消費税簡易課税制度選択届出書の提出期限を「前課税期間の申告期限」に見直すことを強く求めます。この見直しは、中小事業者の予見可能性を高め、実務手続きの一層の簡素化・適正化に資するものと考えます。

6.所得再分配機能等を強化させる税制を求めます。
 消費税が租税収入の中心となった反面、企業の国際競争力(価格を抑えるための輸出免税、諸外国との法人税率のバランスの考慮)からすると所得税や法人税の課税強化ができないと言われています。このような税収のバランス構造でいくと格差社会はさらに進行していくことが容易に想定できます。所得税を課税強化してもわずかだと言われますが、日本に住む大半の納税者が納得できる税のあり方のためにも所得再分配機能は必要だと思います。よって以下の5点について要望いたします。

1)法人税を含めた累進課税の強化
 所得税の最高税率の引き上げや課税ブラケット(区分)の見直しを行い、高所得者に対してより手厚い負担を求めるべきです。あわせて、法人税についても一律のフラットタックスに近い現状を見直し、企業の規模や利益水準に応じた累進性を導入(または強化)することを求めます。これにより、富の過度な集中を抑制し、社会全体への健全な還流を促すことができます。

2)金融資産課税の公平化に向け分離課税制度を廃止し総合課税へ一本化
 現行の税制では、株の売却益や配当などの金融資産所得に対して、一律約20%の「分離課税」が適用されています。これが原因で、所得が1億円を超えるあたりから実質的な税負担率が逆に下がっていく、いわゆる「1億円の壁」問題が生じています。資産運用ができる富裕層ほど優遇されるこの不条理を解消するため、金融所得を他の労働所得などと合算して課税する「総合課税」へ一本化し、税負担の真の公平性を担保すべきです。

3)居住用財産など生活関連資産の譲渡等への柔軟な対応
 富裕層の投機的な資産割当とは異なり、一般の納税者が生活の拠点を移す際(買い替えや相続など)に生じる居住用財産等の譲渡については、担税力や生活維持の観点から慎重な配慮が必要です。生活に密着した資産の譲渡益に対しては、一律の課税ではなく、個々の事情(買い替えの必要性や地域の経済実態)を考慮した特別控除の拡充や税率の軽減など、柔軟で血の通った税制措置を求めます。

4)人的控除の拡大により課税最低限を引上げ
 物価高騰が続く中、実質賃金が伸び悩む中間層・低所得層の生活を守るためには、基礎控除や配偶者控除、扶養控除といった「人的控除」の額を大幅に拡大することが急務です。これにより、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」に必要な所得には課税しないという原則を徹底し、課税最低限を引き上げることで、生活困窮層の底上げと国内消費の活性化を図るべきです。

5)消費税の輸出免税の見直し
 現在の消費税制における輸出免税制度は、輸出企業に対して仕入れにかかった消費税を還付する仕組みですが、これが事実上の「輸出補助金」として機能しており、特定の巨大輸出企業を利する一方で、国内消費を冷え込ませる歪みを生んでいます。国際競争力を大義名分とした特定の業界・企業への優遇措置を見直し、国内の納税者が公平に納得できるよう、輸出免税制度の抜本的な見直しを求めます。

 以上、国民が信頼を寄せ、未来に希望を持てる社会構造を築くため、税制の抜本
的な見直しを強く要望いたします。

7.役員報酬の全額損金算入を求めます。
 中小・小規模法人(以下小規模法人)は、社長・役員が経営をしながら現場で営業や業務を行い、また経理事務や総務・人事などのすべてのことを行っている法人が大多数です。そして会社を存続させるため、従業員の生活のため日々頑張っています。
 そうした会社経営の中で、計画的に利益を出し、毎期の利益を予測することは非常に難しいことです。企業努力をしたり、たまたま利益率の良い仕事が取れたり運が良かったりなど日々の頑張りの中で利益がもたらされることがありますが、これらを事前に予測し、計画したものしか(定期同額・事前確定給与)損金として認められないのでは、この恵みを小規模法人の経営や企業成長にうまく活用することはできません。大企業・業務執行役員は業績連動給与が認められているのに対し、小規模法人はこの制度にうまく合致しておらず、年俸制のような役員給与の設定はそぐわないものとなっております。

 したがって小規模法人はその時々の業績の結果を踏まえ、役員給与は柔軟に決定されるべきと考えます。資本金1,000万円(もしくは500万円)以下の小規模法人に関しては、同族会社であろうが業績に応じた役員の給与・賞与について全額損金算入を求めます。

8.年末調整制度の廃止と全員確定申告制度の導入を求めます。
 現行の年末調整制度は、事業者が従業員の納税額の計算や国への納付作業を全面的に代行しているため、給与所得者が自らの税負担や税制度への関心・理解を薄れさせる要因となっています。主権者たる納税者が、自らの納税実態を正しく把握し理解することは、民主主義の根幹として不可欠です。
 源泉徴収および年末調整制度が、これまで我が国の確実な徴税(平成30年度の徴税コストは100円当たり1.22円:国税庁70年史)に大きく貢献してきた実績は評価いたします。しかしながら、近年の度重なる税制改正に伴い、小規模事業者等における年末調整の事務負担および精神的負担はもはや許容できる限界を超えています。

 特に、いわゆる「年収の壁」の解消に向けた近年の税制改正(令和7年度の基礎控除等の引き上げに続き、令和8年度からは本則基礎控除の増額に加え、所得階層に応じた段階的な特例加算措置や、給与所得控除の特例措置などが導入され、いわゆる「178万円の壁」への対応が図られたこと)は、制度を極めて複雑化させました。従業員ごとの所得見積額に基づいた「階段状の複雑な控除額の判定」や「各種人的控除の所得要件の確認」は、現場の事務担当者に高度な専門知識を要求するだけでなく、誤記や計算ミスのリスクに対する過大な精神的プレッシャーを与えています。これにより、一定の税知識を有する人材の確保や人件費の負担増が避けられない状況です。
 こうした専門スタッフを雇用できない小規模事業者等にとって、事業主自身が日々の経営を行いながら、この複雑極まる年末調整実務を完遂することは不可能に近く、費用を支払って税理士等へ外部委託せざるを得ないケースが急増しています。国税庁が令和8年3月に発表した「令和6年度分 会社標本調査」によれば、全法人に占める欠損(赤字)法人の割合は60.3%に上り、依然として多くの小規模事業者が厳しい経営環境にあります。このような状況下において、年末調整事務に係るわずかな経費や税理士報酬の手数料であっても、事業者にとっては決して小さな負担ではありません。

 納税者が正しい税知識を醸成し、主権者たる納税者として国政や財政に関心を向ける契機とするためにも、年末調整制度を廃止し、全員確定申告制度へ移行することを求めます。

9.記帳の不慣れな納税者等への対応策を求めます。
 令和4年度税制改正により、税務調査において証拠書類を提示せず帳簿外の経費を主張する悪質なケースへの対応として、必要経費・損金不算入の措置が講じられました。しかし、この運用の現場においては、意図的な不正ではない「記帳能力の格差」や各事業者の経営環境を踏まえた、柔軟かつ実態に即した対応を強く求めます。

 そもそも消費税導入当初、仕入税額控除の要件は「記帳または原始記録の保存」とされていたものが、その後の改正で「帳簿および請求書等の保存」へと厳格化され、現在のインボイス制度(適格請求書等保存方式)下においては、登録番号の記載や税率ごとの区分など、極めて緻密な帳簿記載と厳格な管理が事業者に義務付けられています。一方で、所得税法においては「整然と、かつ、明瞭に記録しなければならない」との包括的な規定にとどまっており、本来、記載の具体的方法は納税者の裁量に委ねられているはずです。それにもかかわらず、消費税法を盾に原始記録(領収書等)があるにもかかわらず、帳簿のわずかな文言の不備や形式的な基準のみを捉えて仕入税額控除を否認するような、税務調査の現場が散見されることは極めて遺憾です。昨年の国税調査においては、原始記録で仕入税額に関する内容の確認が十分に行える状況にありながら、調査担当者からは「相手先の名前が書いていないような帳簿では、仕入税額控除はできない」との発言もあるなど、上記規定の濫用とも思える形式的な基準で仕入税額控除を否認するなど納税者の適正な申告に対する意欲を削ぐような調査が行われました。取引の実態が原始記録で確認できるのであれば、形式的な不備のみを理由とした否認は行うべきではありません。

 さらに、電子帳簿保存法の完全義務化以降、デジタルデータの保存実務は一層複雑化しています。例えばクレジットカードの利用明細データ(電子取引)は、軽減税率の区分記載がないことなどを理由に、依然としてそれ単体では不十分とされ、事業者には多重の保存・確認負担がのしかかっています。税率の簡素化やデジタルデータの標準化を進めることで、クレジットカード明細や各種決済データをそのまま税法上の原始記録(有効な証拠書類)として認め、保存実務を大幅に簡素化すべきです。

 これらを踏まえ、税制のデジタル化を進める一方で、技術的に対応が困難な納税者に対しては、猶予として暫定的期間を設けたうえで「アナログ(紙媒体)による申告・保存の権利」を法律上明確に保障することを求めます。具体的には、紙の領収書やノートへの手書き記帳であっても、取引の実態が確認できる限りはデジタル保存と同等の法的効力を完全に認めること、また、税務のデジタル移行を無理に強要せず、紙での申告を続ける納税者に対して税務署窓口等での対面サポート体制を大幅に拡充するデジタルセーフティネットの構築を強く要望いたします。

10.令和9年以後の青色申告10万円控除の適用除外となる基準について、現行案の「前々年の売上高1,000万円超」から「前々年の売上高5,000万円超」へ緩和することを求めます。
《要望の理由》
◆消費税「簡易課税制度」の適用基準との整合性
 現行の税制において、売上高5,000万円以下の事業者に対しては、事務負担を軽減する趣旨から消費税の「簡易課税制度」の適用が認められています。同じく事務負担軽減のための措置である青色申告10万円控除(簡易な記帳による控除)において、その基準を「1,000万円」とすることは、消費税制の特例基準とも乖離し、事業者の税務理解を混乱させる要因となります。中小事業者の事務能力を評価する基準線として、消費税の簡易課税基準である「5,000万円」と統一することが、税制全体の整合性の観点からも最も合理的です。
◆インボイス制度導入および物価高騰による負担の考慮
 現在、小規模事業者は原材料費やエネルギー価格の高騰に加え、インボイス制度の導入に伴う実務負担の増加に直面しています。この状況下で、さらに所得税における記帳水準の引き上げ(簡易な記帳から正規の簿記への移行、または控除の喪失)を求めることは、事業者の経営体力を著しく削ぐ結果となりかねません。
◆「売上高1,000万円」と「実際の利益(所得)」の乖離
 売上高が1,000万円を超えていても、仕入れ依存度の高い業種(小売業、飲食業、製造業など)では、店主の所得(利益)が生活を維持する精一杯の規模にとどまるケースが多々あります。「売上高」のみを基準に1,000万円という低いラインで一律に制限をかけることは、これら実質的な小規模困窮事業者の税負担を増大させる恐れがあります。
◆中小企業基本法における「小規模企業」の実態
 中小企業基本法において、商業・サービス業の小規模企業者は「従業員5人以下」と定義されています。これらの事業者の多くは、売上高が数千万円規模であっても、経理専門の職員を雇う余裕はなく、経営者自身が夜間等に簡易な記帳を行っています。税制上の事務負担軽減の対象としては、少なくとも売上高5,000万円程度までの小規模事業者を包含することが実態に即しています。

 以上の理由により、小規模事業者が活力を持って事業を継続できるよう、青色申告10万円控除の売上高要件を「5,000万円超」へ緩和することを要望いたします。

11.収受印の押印の継続・電子申告(利用者識別番号の取得)の改善を求めます。
 国税庁のHPによりますと、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会の実現」とうたわれており、その一環としてe-Taxの利用による電子申告を推進されており、スマホからも送信できるなど利用者の利便性が向上したことは理解しております。
 その反面、一定のIT弱者の存在があることも事実であり、そういった方は税務署で指導を受けて手続きを行うか、書面での提出を行っている現実もあります。また、年末調整制度の廃止と全員確定申告制度の導入の項でも申し上げましたが、税法が年々複雑になっており税務署の手助けの比重が大きくなっている現状もあります。

 そういった中で、当分の間は申告書等を収受した「日付」や「税務署名」を記載したリーフレットを希望者に交付することになっていますが、令和7年1月からは窓口での収受印の押印が実質的には廃止されております。
 確かに確定申告における税務署での対応は、PCによる申告書作成でありe-Taxに対応しているので問題はないと思われますが、小規模事業者等の中には、自分自身で申告書を作成して提出される方や、確定申告期以外に各種申請書や届出書は書面による提出も多く存在しているものと思われます。小規模事業者等からすると、確定申告は事業の一年の締めくくり(総決算)という意識も強く、納税者自ら集計、決算した申告書への収受印の押印がある控えを保存したいという意識が根強いのではないでしょうか。
 デジタル化の波の中、行政側でも申請、提出事項は全面的にオンラインで電子申請を行い、税務行政の迅速化、効率化を図っていくという方向性は重々承知しております。ただ実態としてはまだまだオンライン環境の導入・維持・管理が困難な事業者も数多くいらっしゃいます。つきましては確定申告書、各種申請書や届出書の窓口提出分については、納税者と税務行政庁との貴重な接点として控えへの収受印の押印継続を求めます。

 更に各種の届け出の中には、一度提出すると半永久的に効力を持つものもあり、過去に書面で提出したものが有効であるにもかかわらず、電子送信の履歴に表示がないために誤った処理をしてしまう場合も考えられます。また、納税者の受託者間で利用者識別番号が適切に引き継がれないことも想定されるため、届出書等はあえて書面で提出し、その控えを保存するといったケースもあり収受印の押印は必要と考えます。

 また、相続税の申告において、ある相続人が海外居住者の場合は、その者の利用者識別番号が取得できないため、e-Taxが利用できず、他の共同相続人も書面での申告となります。この場合においても収受印の押印がなければ、納税者側(委託を受けた税理士事務所)は余分な管理コストを負担することになります。受信者側の環境整備(利用者識別番号の照会サービス、データ容量の増設等)は評価できますが、利便性は半減しているのではないかと考えます。今後、グローバル化がより一層進展し、相続人が国外に居住する状況は多くなることも想定される中、より未来を見据えた対応をお願いしたいと思います。

Ⅲ.労働と社会保障制度に関する要望

12.「キャリアアップ助成金 正社員化コース」の対象労働者の要件の見直しを求めます。
 事業所が助成金を活用するにあたり、それぞれ助成金には目的がありますが、キャリアアップ助成金などの主旨には「有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者等の企業内でのキャリアアップ(職務経験や職業訓練等の能力開発機会を通じ、職業能力の向上が図られ、これによりその将来の職務上の地位や賃金をはじめとする処遇の改善が図られることをいう。以下同じ。)を支援するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成金を支給することにより、労働者の雇用の安定、処遇の改善を推進するものである。」とあります。
 一方で対象となる労働者の要件は、過去3年以内に当該事業所と請負もしくは委任の関係にあった者は正社員化コースの対象となる労働者から除かれており、制度の主旨との違和感があります。

 当該事業所に、労働者として採用されたうえは、事業所の指揮命令下により雇用される一労働者として等しく、職務経験や職業訓練等の能力開発機会を与えられ、職業能力の向上とその将来の職務上の地位や賃金をはじめとする処遇の改善が図られるべきであり、このような直接雇用前の就労形態により対象労働者から除かれることは、事業所の職業能力の開発の機会の意欲を削ぎ、均等な教育機会などの待遇の差を生むことにも繫がります。結果、一部の労働者の職業能力の開発機会の損失と当該事業所での職務上の地位や賃金など、将来の処遇にも影響を与える可能性があるため、対象労働者から請負もしくは委任の関係にあった者を除くとする要件の削除を求めます。

13.「キャリアアップ助成金 正社員化コース」の正規雇用労働者の定義の見直しを求めます。
 キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、就業規則等に規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正規雇用労働者化(以下、正社員という)した取組に対する助成金ですが、「正規雇用労働者の定義」として転換後の正社員に適用される就業規則において「賞与または退職金の制度」の規定がされ、かつ「昇給」が転換時点で適用されている正社員への転換に限る、とされています。更に就業規則等で規定されていたとしても、支給対象期間中に実施が予定されている「賞与」「昇給」等が適用されていない場合、正規雇用労働者の要件を満たさず、支給対象とならない場合があります。小規模事業者等においては、その経営状態の脆弱さから、正社員であっても必ずしも賞与や退職金及び、定期昇給があるところばかりではありません。
 本来、このキャリアアップ助成金(正社員化コース)は、雇用が安定しない有期労働者の雇用を確保することを目的に無期雇用への転換が目的であったはずです。しかしながら、近年になって審査基準が厳しくなり上記のような正社員の定義が後付けでなされ、助成金を申請できない小規模事業者等が増大しております。

 正社員であれば賞与は年間10万円以上の支給があるべきとの基準を設定するなど、本来は労使自治で決定するべき、会社の賃金支払い形態の変更を迫るような項目も見られ、本助成金の申請対象事業者が大手企業を主要な目的とし、小規模事業者等については排除するような動きに見受けられます。人材不足が深刻な昨今において、大企業や資本力のある企業などがより有利な条件となり、競争力のない小規模事業者等にとって公平性に欠けるため、現在の「正規雇用労働者の定義」を撤廃若しくは見直しすることを強く求めます。

14.雇用保険の適用拡大を見据え、資格取得届申請後の迅速な公文書発行を可能にする電子申請事務体制の構築を求めます。
 令和6年5月10日成立の雇用保険法等の一部を改正する法律により、令和10年10月1日から雇用保険の被保険者の要件のうち、週の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」となり、適用対象が拡大されます。これにより、従来よりも多数の被保険者資格取得届が事業所から申請されることが予想されます。
 現在、各都道府県の労働局には雇用保険電子申請事務処理を集中処理するための拠点として「雇用保険電子申請事務センター」が設置されておりますが、申請件数の大幅増加へ対応するためにAI 導入など抜本的な体制強化を求めます。

 現状においてすら、全国の事業所の入社手続きが集中する4月は、被保険者資格取得届を電子申請してから被保険者証など公文書が発行されるのに長い時間を要しています。他の月であれば数日で手続きが完了するところ、4月は手続き完了に約1か月かかるケースもあります。

 建設業に従事する労働者の場合、建設現場に入場する際に被保険者証の提示を求められることが多く、提示できなければ入場できないこともあり、建設現場での作業に支障を来します。また、建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録申請時に雇用保険被保険者資格取得等確認通知書が必要となり、これが欠けると申請手続きが滞ります。CCUSは、一人ひとりの建設業の技能者の情報を蓄積して、その情報を活用して技能者が能力や経験に応じた処遇を受けられる環境を整備することを目的としています。将来にわたって建設業の担い手を確保するためにも、雇用保険の資格取得届の電子申請審査のスピードアップを担保する体制の整備を求めます。

15.労災第2種特別加入の対象拡大と第1種特別加入との合併及び、加入団体・事務委託制度以外の簡易な加入手続き制度の創設と一人親方への報奨金制度の導入を求めます。
 労災の事業主の特別加入制度は、第1種特別加入(中小企業事業主等)に加入していても従業員がいなくなると第2種特別加入(一人親方、特定作業従事者)に変更しなければなりません。また、第2種特別加入に加入していても従業員を雇うと第1種特別加入に変更しなければなりません。小規模事業主にとっては、行ったり来たりで手続きが煩雑です。

 小規模事業主は自らも危険な業務に従事していることが非常に多く、労働者に準じて労災保険により保護されるべき者がほとんどです。第2種特別加入の適用範囲が近年拡大されてきてはいますが、現在限定されている業種をすべての業種に拡大し、第1種特別加入の対象となる事業主を包含した制度への一本化を求めます。
 つまり、従業員の有無にかかわらず一定の規模以下の事業所が事業主も含めて加入できる「小規模事業者労働災害保険(仮称)」制度の創設を求めます。

 また、特別加入制度は現在、労働保険事務組合又は一人親方等の団体を通じて加入することとなっているため保険料以外にも手続きに要する費用負担が必要になります。事業主の費用負担軽減のため、事業主の直接手続きでも特別加入できる制度への改正を求めるとともに第2種特別加入についての労働保険事務組合への報奨金制度も求めます。

16.労働保険事務組合に対する報奨金の上限額の撤廃を求めます。
 労働保険事務組合(以下「事務組合」という)の保険料、一般拠出金の申告納付その他労働保険事務の適正な遂行の労に報い、もって労働保険料、一般拠出金の収納率を高く維持するために、納付状況が著しく良好な事務組合に対し、毎年1回報奨金が交付されます。これは今後における当該事務組合の適正な事務処理を奨励するとともに、事務組合制度の普及発展と、小規模事業者等への労働保険の適用を促進することを目的としています。

 働き方改革の進展で労働時間や雇用形態の変化が進む中で労働保険に関する手続きの複雑化、事業形態や規模が多様化する中での労働保険に関する事務処理の複雑化、労働力不足が深刻化する中での事業者の負担増等々、このような環境下で労働保険事務組合制度の必要性が益々高まると思われます。
 また令和2年4月1日より、従来あった委託事業所の地域要件が撤廃され、全国どこでも委託できるようになりました。これに伴い、事務組合の業務処理の範囲も規模も大きくすることができ安定的な運営が求められます。

 このような環境の変化や事務組合の規模の拡大に鑑み、報奨金の上限を1千万円としていますがその上限の撤廃を求めます。

17.時間労働者への社会保険適用拡大に対して、適用の緩和と事業主負担分の保険料率軽減を求めます。
 社会保険加入の適用範囲拡大について小規模事業者等への配慮を求めます。
 短時間労働者の社会保険加入要件において、①企業規模要件を段階的に拡大し最終的には2035年にはすべての規模の企業を対象とする、②年収要件の撤廃等の見直しがされます。このことによる社会保険料の事業主負担増加は、近年の最低賃金の大幅な引き上げとも相まって人件費の増大による小規模事業者等の大量倒産に繋がる可能性があります。
 政府は、①短時間労働者への支援策として、3年間事業主の追加負担による短時間労働者の保険料負担を軽減し、事業主の追加負担分について国が全額返金する支援策及び、②事業主向けの支援として、社会保険の加入にあたり労働者の収入を増加させる事業主への助成金(キャリアアップ助成金の社会保険適用処遇改善コース)による支援策を用意していますが、いずれも労働者の保険料負担を軽減するための施策であり、むしろ事業主は社会保険料事業主負担に加えて賃金も上げなければならないため、人件費率は増すばかりとなっています。

 したがって改正内容の規模要件の緩和と、小規模事業者等には適用事業所になった場合、週20間以上30時間未満の労働者の過半数が加入に反対した時は、原則加入しないですむ制度の創設、中小企業等の社会保険料の事業主負担の料率引下げを求めます。併せて企業規模に関わらずに同率で社会保険料を負担している不公平を是正するために大企業については、事業主負担分に加え社会保険制度全体を支える「支援金(仮称)」の創設を求めます。

18.賞与等が雇用保険料及び健康保険料の算定に含まれるのに対し、給付には反映されない根拠の説明と負担と給付とのバランスを考えた制度になるよう求めます。
 雇用保険料及び健康保険料の徴収額計算において賞与等の金額が含まれているにもかかわらず、失業等給付及び傷病手当金の給付には賞与等の金額を含めない額を計算の根拠としています。
 本来の「保険の原則」や保険事故に対する「生活保障という目的」から鑑みても、保険料の負担と保険金の給付バランスが著しく欠け、保険事故が起こった際の保障としては不十分な、不合理な仕組みとなっています。このような仕組みの根拠の合理的な説明と賞与等の額を給付金額に反映させるなど制度の見直しを求めます。

19.労働保険、社会保険の保険料の算定期間を所得税の年末調整と同様に1月から12月の暦年とし、算定対象の賃金から通勤手当(所得税同一基準)を除き、統一したフォーマットで事業者の負担軽減と公平で簡素な制度にすることを求めます。
 社会保険料の定時決定(算定基礎届)は、4月から6月の報酬で保険料が決定され、その後に固定的賃金の変動があり、2等級以上の標準報酬月額の変更があった際にはその度に随時改定の届け出をしなければなりません。定時決定の算定期間が3か月の平均であることから公平に標準報酬月額が決定されているとは言えず、また固定的賃金や所定労働時間が変わる度に随時改定の届け出の要否を検討することは、事業主にとって煩雑な事務負担となっており、煩雑さ故にルール通りに運用できていないケースが多くあります。
 また、労働保険料は4月から翌年3月、社会保険料は4月から6月、所得税の年末調整は1月から12月とバラバラの算定期間によって、それぞれを計算することになっています。これらの計算期間の違いが、事業者にとって大きな事務負担に繋がっています。

 さらに通勤手当について、社会保険料及び労働保険料はその算定の対象賃金に含めるのに対して、源泉所得税の計算では原則非課税として給与金額に含めません。通勤手当は、厚生年金法第3条第3項の「労働の対償として受けるもの」ではないと解されます。その根拠は以下の点からも明らかです。
☆ 所得税法では実費弁済的なものであるから非課税としている
☆ 昭和27年厚生省の疑義解釈において「通勤手当は生活費の一部であり報酬であると解する」としているが実費弁済とする所得税法との解釈に矛盾がある
☆ 過去にも国会の委員会で何度も取り上げられているが、保険料収入の減少を理由に結論を出していない
☆出張旅費や赴任旅費、作業衣、制服等は実費弁済的なものとして報酬に含まれない
☆在宅勤務者が自宅勤務の日に一時的・臨時的に出社した場合の通勤費は算定対象にならない

 源泉所得税と社会保険・労働保険料の計算期間及び計算対象報酬を合せることにより事業主から統一したフォーマットの賃金報告書類の提出を受けて、国が一括して源泉所得税、社会保険・労働保険料を計算し、徴収・賦課する方式に変更することを求めます。このことにより、企業や当該官庁の事務的負担を大幅に軽減することができます。財務省、厚労省と連携し要望した内容が実現できるように大きな制度改革を求めます。

20.時間単位有給休暇の上限撤廃、もしくは上限の引き上げを求めます。
 時間単位有給休暇は、1時間から取得できるというメリットがあり、育児や介護に携わる労働者や今後益々進むであろうワークライフバランスに配慮した多様な働き方を望む労働者にとって、非常に使い勝手の良い制度になっています。
 現在は、時間単位有給休暇で取得できる上限が年5日と制限があります。
 丸一日休んでリフレッシュできるように、一日取得が原則という有給休暇制度当初の趣旨があるのは理解していますが、時代の変化とともに労働者の思考も変化してきており、時間単位有給休暇の上限撤廃もしくは上限の引き上げにより、有給休暇取得の利便性が上がると思われますので、検討をお願いします。

21.「労災による休業」期間中の社会保険料免除の制度化を求めます。
 社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の免除は、主に「産前産後休業」「育児休業」の期間中に認められています。しかしながら「労災による休業」の期間中に関しては社会保険料の免除が認められておらず、被災労働者、事業主双方に社会保険料の負担が継続して発生しています。
 労災休業中は、休業(補償)給付が行われるものの、通常の給与水準を下回るため被災労働者は減収を余儀なくされます。これに加え、代替要員の確保に追われる事業主側にも重い経済的負担が課せられる結果、被災労働者の経済的自立を脅かすだけでなく、特に通勤災害の場合、労基法第19条の解雇制限の射程外のため事業主の雇用維持への意欲を低下させる要因となっています。
 したがって、労働者の生活防衛と雇用の維持を図り、労使双方にとって安心な環境を構築するため、「労災による休業」期間中の社会保険料免除の制度化を求めます。

22.健康保険の扶養の要件緩和を求めます。
 昨今の物価高騰に伴い、税法上の扶養基準(基礎控除等)が見直され、給与所得者の課税最低限が引き上げられるなど、国民の生活実態に合わせた制度改革が進められています。しかしながら健康保険上の被扶養者要件においては、依然として「被保険者の収入の2分の1未満」かつ「対象者の年収が130万円未満」という基準が維持されたままとなっています。
 近年の度重なる最低賃金の引き上げにより、短時間勤務の非正規雇用労働者であっても、意図せずこの「年収の壁」に直面するケースが急増しています。税法上の扶養要件が緩和されたとしても、健康保険上の要件が据え置かれたままでは、扶養対象者の「働き控え」を解消することは不可能です。
 現行制度では、年収が130万円を超えた時点で健康保険および厚生年金(あるいは国民健康保険・国民年金)の保険料自己負担が発生し、いわゆる「働き損(手取りの逆転現象)」のゾーンが発生します。この逆転を解消し、明確に世帯収入が増加し始めるラインは「年収160万~170万円以上」と言われており、130万円の壁を超えるためには大幅に労働時間を増やさざるを得ないのが実情です。

 つきましては、時代に即した就労促進の観点から、以下の2点を強く要望いたします。
1)健康保険上の扶養における収入要件を、現在の130万円未満から、150万円へ引き上げること。
◆健康保険ではすでに19歳以上23歳未満の(配偶者以外の)扶養対象者については150 万円未満までの扶養追加が認められておりますので年齢および配偶者非該当の要件を撤廃する。
2)被扶養者異動届等の手続きにおいて、今なお「年収103万円」を基準として求められている収入証明資料の添付義務について、税法上の基準引き上げに連動させ、事務手続きの簡素化・合理化を図ること。
◆具体的には税法上の扶養と連動し103万円から123万円への引き上げを行う。また、被保険者と同居および個人番号が記載されているのであれば被保険者同様住所の記載は省略可能とする。

 労働意欲があるにもかかわらず働き控えなどが起きてしまっている現状を打開し、時代の変化に則したシンプルかつ合理的な環境の整備を求めます。

23.協会けんぽの健康保険料率と子ども・子育て支援金率の改定時期を揃えることを求めます。
 令和8年度より子ども・子育て支援金制度がスタートしました。国による子育て支援を拡充するための財源として全世代で負担し、協会けんぽなどの医療保険制度から医療保険料と併せて拠出します。支援金率(保険料率)は0.23%で4月分から拠出します。協会けんぽなど被用者保険に加入している方は、5月給与から支援金の天引きが始まりました。支援金制度については令和8年度から段階的に実施することが法律に規定されており、来年度以降の料率の改定が予想されます。

 一方、協会けんぽの健康保険料率は年度ごとに見直され、例年3月分(4月納付分)より改定されます。事業所の給与計算においては、当月の健康保険料を翌月の給与から控除するケースが一般的です。したがって協会けんぽに加入する事業所は、今年の給与計算の実務において、4月給与で3月分の健康保険料を改定し、5月給与で4月分の子ども・子育て支援金を追加し、2か月連続で変更への対応を迫られました。
 協会けんぽは平成20年10月に発足し、それまで国が運営していた政府管掌健康保険を引き継ぎ、中小企業の従業員とその扶養家族が加入する公的医療保険を運営しています。加入者数は約3,900 万人(令和6 年度末時点)で、日本の総人口の3割強を占めます。その規模は大企業が中心の組合健保の約2割を上回り、日本最大級です。協会けんぽに加入する中小企業や小規模事業者は人員が少なく、給与から控除する社会保険料を2か月連続で変更する作業は大変な負担です。
 また、名称が従来から存在する「子ども・子育て拠出金」と類似していることも、事業所の作業ミスを誘発しかねません。子ども・子育て拠出金は事業主が全額負担するものですが、事業所の中には誤って子ども・子育て拠出金を半分にした額を従業員の給与から控除しようとした事業所もありました。名称再考の余地もあります。

 中小企業や小規模事業者の負担を軽減するために、来年度から協会けんぽの健康保険料率と子ども・子育て支援金率の改定時期を揃えることを求めます。

24.65歳以上にも基本手当が支給されるよう失業等給付の適用拡大を求めます。
 雇用保険の被保険者が失業した場合、要件を満たせばハローワークで失業等給付を受給できます。離職時の年齢が65歳未満であれば、一般被保険者に対する求職者給付として基本手当が支給されます。自己都合退職で雇用保険加入期間が20年以上の場合、150日分を受給できます。一方、65 歳以上の場合は、高年齢被保険者として扱われ、高年齢求職者給付金が一時金として支給されます。雇用保険加入期間が1年未満の場合で30日分、1年以上の場合で50日分をそれぞれ受給できます。20年以上の加入期間があっても一律1年以上と扱われます。
 平成29年1月1日より、それまで雇用保険の適用除外であった65歳以上の方も雇用保険の適用対象となりました。65歳以上の方も一般被保険者と同様に雇用保険料を負担しています。年齢に関係なく等しく雇用保険料を負担しているのに、65歳未満と65歳以上とで支給される給付の種類が異なるのは不公平といえます。

 令和7年の年金制度改正法に基づき、令和8年4月から年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました。平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けることを希望する高齢者の方の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みとすることが改正の趣旨です。大企業のみならず中小企業においても、警備業をはじめ様々な業種で高齢者を積極的に雇用しています。65歳以上の方の求職活動は、就業希望や就職に至る経路等も多様であり公共職業安定所において定期的に失業認定を行い、職業紹介を行う形式には馴染みにくいという指摘もあろうかと思います。しかし、働きたい高齢者が長く活躍できる社会の実現へ向けて、65歳以上の方が公共職業安定所で求職活動を積極的に行えるよう、65歳以上の方にも基本手当が支給されるよう失業等給付の適用拡大を求めます。

25.制度導入系助成金の公平性確保と事務手続きの簡素化を求めます。
 雇用関係助成金のうち、制度導入に対する助成金〔人材開発支援助成金(教育訓練休暇制度導入)、両立支援等助成金(子の看護等休暇有給化)など〕の運用について、以下の2点を要望します。

1)自主的に労働環境を整備してきた既導入事業所への特例支給措置
◆【現状】…平成31年度以降の人材開発支援助成金(教育訓練休暇制度導入)や、令和7年10月に新設された両立支援等助成金(子の看護等休暇有給化支援)など、労働者にとって有益な制度を導入した事業所に支給する助成金において、コース新設前・計画届提出前の「既存導入事業所」が一律に対象外となっています。これは、助成金に頼らず先進的に環境整備を行ってきた事業所への公平な評価を欠くばかりでなく、既存制度を新規導入と偽って申請するような「不正受給の心理的動機」を生む懸念もあり、制度の健全な運用の観点からも改善の余地があると考えます。
◆【要望】…既存のこれらの助成金および今後の制度導入に対する助成金の新設時等において、すでに同等以上の制度を運用している事業所に対しても、通常の支給額に満たなくともその一定割合(例えば8割程度)を支給するような、特例的な助成措置(救済措置)を求めます。

2)就業規則の新規作成時における運用の一律化
◆【現状】…一部の助成金においては、支給申請時に制度導入前後の就業規則の提出を求められるため、「制度なしの就業規則作成」→「計画届提出」→「就業規則の改定(制度導入)」という手順が求められます。これにより、就業規則を新規作成する事業所であっても、形式的に一度「制度なしの就業規則」を作らざるを得ず、常時使用する労働者が10人以上の事業所においては作成、改定の度に労働基準監督署への届出が必要になるなど実務が大変煩雑となっています。こうした不要な事務負担(二度手間)は、本来の目的である「職場環境の速やかな整備および各種制度の円滑な運用開始」を妨げる要因となっています。
◆【要望】…計画届提出後、あらかじめ対象となる制度が組み込まれた就業規則を新規に作成・施行した場合についても、一律に支給対象とすることを求めます。

26.遺族基礎年金の受給対象となる「子」の年齢要件について、現行の「18歳に達する日以後の最初の3月31日まで」から、少なくとも大学等の高等教育機関を卒業する年齢に相当する22歳到達年度末まで引き上げることを求めます。
 現在、遺族基礎年金における「子」の要件は、18歳に達する日以後の最初の3月31日まで(または一定の障害状態にある場合は20歳未満)と定められています。しかしながら、現代社会においては高校卒業後に大学、短期大学、専門学校等へ進学することが一般的となっており、18歳時点で経済的自立が完了している若年者は少数です。特に、父母の一方または双方を亡くした子どもにとって、進学期間中は依然として生活費や学費の支援を必要とする状況にあります。
 生計維持者を失った遺族世帯においては、進学の継続や学業への専念に必要な経済的基盤が失われることで、教育機会の喪失や将来の所得形成への影響が懸念されます。遺族基礎年金は、親を亡くした子どもの生活を支え、自立を後押しする重要な社会保障制度です。しかし、現在の制度では、高校卒業後も継続する教育費や生活費の負担に対して十分な支援が行き届いているとは言い難い状況にあります。

 つきましては、遺族基礎年金の受給対象となる「子」の年齢要件について、現行の「18歳に達する日以後の最初の3月31日まで」から、少なくとも大学等の高等教育機関を卒業する年齢に相当する「22歳に達する日以後の最初の3月31日まで」へ引き上げていただくよう要望いたします。

 もし、財政的な制約や制度設計上の課題等により、一律の年齢引き上げが難しい場合には、以下のような条件を設けた上で対象を拡大することについてもご検討いただきたく存じます。
1)亡くなられた方の国民年金保険料の保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が一定以上ある場合に限り、支給対象年齢を引き上げる。
2)大学、短期大学、専門学校等の高等教育機関に在学していることを要件とする。
3)子に一定の収入要件を設け、十分な就労収入がある場合には対象外とする。
 このような制度設計を行うことで、制度の持続可能性との均衡を図りながら、生計維持者を失った子どもたちが経済的な理由によって進学や学業継続を断念することのない社会の実現につながるものと考えております。

27.国民年金第3号被保険者制度が縮小になった場合、厚生年金保険料率を引き下げることを求めます。
 令和8年4月13日に自民党と日本維新の会は、社会保障改革に関する実務者協議を行い、具体策の議論には入らなかったが、国民年金の第3号被保険者(※)の対象者を縮小する方向で一致しました。
(※)第3号被保険者:厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円未満であり、かつ配偶者の年収の2分の1未満の方)は国民年金の加入者であるにも拘らず保険料の納付は不要。

 第3号被保険者制度は、昭和60年の年金制度改正による基礎年金制度の導入に伴い、昭和61年4月に創設されました。これは専業主婦が主流だった時代に、個別に保険料を納めることが出来ない専業主婦にも、「自分名義の基礎年金」を保障し、女性の年金権を確立する目的で制定されております。
 ところで、厚生年金保険料率の変遷を見ると、昭和60年10月1日から大きく引き上げられています(第1種で1000分の106→1000分の124)。この引き上げは、昭和60年の改正の趣旨である、基礎年金の導入、給付水準の適正化、女性の年金権の確立等を図るためと解されます。

 今後の国民年金の第3号被保険者制度の見直しの議論の行方次第ですが、仮に第3号被保険者制度の対象者が縮小された場合、第2号被保険者が負担している第3号被保険者の国民年金保険料に充てるための基礎年金拠出金がかなりの程度軽減されることになり、さらに短時間労働者として社会保険に加入する被保険者が増えることなるため、このままの保険料で据え置くことはステルス増税に他ならないと考えられますので、対象者を縮小する比率に応じた厚生年金保険料率の引き下げを強く求めます。

28.産前休業制度の期間の延長を求めます。
 現在の産前休業制度は、出産予定日の6週間前(妊娠34週)から休業が可能となり、出産手当金の支給や社会保険料の免除対象となっています。しかし、この基準は昭和22年の労働基準法制定以来、約80年間にわたり一度も改定が行われていません。
 対象となる妊娠34週は、胎児の臓器や機能が十分に成熟し、医学的にいつ産まれても問題ないとされている正産期(妊娠37週)までわずか3週間という出産直前の時期です。実際には、妊娠30週(出産予定日の10週間前)を迎える頃から、胎児の体重は急激に増え、子宮が胃や心臓を圧迫し、母体への身体的・精神的負荷は著しく増大します。
 近年、高齢出産の増加や共働き世帯の拡大など、妊産婦を取り巻く環境は大きく変化しています。女性の健康を守り、休める選択肢・働く選択肢の幅を広げるためにも、産前休業期間の開始時期を「妊娠30週(産前10週)」へ引き上げるよう求めます。

29.育成就労制度の日本語教育の機会提供について支援策を講じることを求めます。
 新たな育成就労制度では、受入機関での日本語教育(就労過程)の機会提供や費用負担が義務づけられています。従前どおり、受入機関での業務や技能に関する教育に関しては、受入機関が行うべきかとは思いますが、日本社会へ適応するための日本語教育をも受入機関での機会提供が必要となるのは、特に中小企業・小規模事業者にとって費用面・業務面ともに大きな負担となります。
 外国人との共生社会の実現に向けたロードマップの一環として、日本語教育に関して、支援策も含めた日本政府の主体的なサポートと関与を求めます。

30.外国人の人権保護を確実なものとするため受入企業については事前許可制とすることを求めます。
 現在、技能実習制度の実習計画認定の流れは、まず受入企業が外国人材を採用し、採用後に外国人技能実習機構へ計画認定の申請を行い、認定後、実習を開始し、外国人技能実習機構は、3年に一度の検査を行うことにより外国人の保護を行っていますが、今後、育成就労制度等では受入企業の事前検査による許可制とし、採用するよりも前に職種・産業分野等の合致性、労働環境の確認等を行い、許可後に外国人材の採用が行えるようにすることを求めます。

31.外国人就労者(特定技能、育成就労、技能実習)の受け入れ総数を、必要に応じた柔軟な決定制度の導入を求めます。
 我が国の中小企業・小規模事業者(以下、「小規模事業者等」)における人手不足は、生産年齢人口の急激な減少に伴い深刻さを増しています。こうした中、2019年に創設された特定技能制度では、深刻な人手不足に直面する特定の産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れる仕組みとしてスタートしました。導入当時の2018年、政府(第四次安倍改造内閣)は、国内雇用への影響や社会インフラの受容能力を考慮し、各分野を管轄する省庁が計算・作成した原案をもとに「閣議決定」という形で、向こう5年間の受入れ見込み数を「受入れ上限値(最大総数34万5150人)」として各々の分野ごとに設定しました。
 また、並行して運用されてきた技能実習制度も、実質的に小規模事業者等の重要な労働力を支える基盤となってきました。さらに来年より、技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と育成を明確な目的とした「育成就労制度」が創設され、外国人材受け入れの枠組みは大きな変化のなかにあります。

 しかしながら昨今、特定技能の外食分野の上限値に達し、在留資格の発給停止に至る報道があり外食業界や外食分野を目指していた就労希望者に衝撃が走りました。一方、上限充足率が3割程度も達していない分野も存在しています。5年以上前に設定した受入れ数では、急激な経済情勢の変化や産業構造のシフト、予期せぬ需要の増減に対して機動的に対応出来なかったことが露呈したと言えます。特定の分野で想定以上の人手不足が生じ、現場は期待していた人員を確保できず、小規模事業者等は事業継続の瀬戸際に追い込まれるリスクがあります。

 また、技能実習(今後の育成就労)と特定技能が、実質的には「人材の育成から定着」という連続性を持ったキャリアパスとして機能しているにもかかわらず、上限値の算定や管理が別々に行われている為、外国籍労働者の受入れの全体像がぼやけてしまっています。日本文化に共感を持ち技能実習制度などを活用し、日本で育成された外国人材のさらなる継続就労や転職へ移行することが期待されるが、特定技能側の分野別上限値がボトルネックとなり、優秀な人材の帰国や他国への流出を招くことは、日本の事業者等にとって大きな機会損失が発生しています。特に、深刻な労働力不足に悩む地方の事業者においては、硬直的な枠組みが地域経済の衰退を一段と加速させかねません。

 したがって、今後の外国人材政策においては、実態に即した総量管理と現場のニーズに連動した柔軟な運用への転換が不可欠です。特定技能、育成就労、および既存の技能実習の在留数を一体的に捉え、各産業分野におけるリアルタイムの労働需給バランスや経済動向を反映させながら、分野別の受け入れ上限値を毎年必要に応じて柔軟に決定・再配分できる新たな調整制度の導入を強く求めます。これにより、硬直的な制度による産業界の足かせを排除し、特に地方の事業者が未来に向けて存続・発展できる環境の整備を要望いたします。

32.有害業務に従事した帰国外国籍労働者に対する健康管理手帳制度の周知徹底と、海外からの費用請求等に対応する一元化窓口の設置を求めます。
 我が国の建設業、製造業、船舶解体などの産業現場において、技能実習生や特定技能外国人といった外国籍労働者の存在は、今や中小企業・小規模事業者(以下、「小規模事業者等」)の存続を支える不可欠な基盤となっています。これら現場の一部では、石綿(アスベスト)の取扱い、粉塵作業、特定の化学物質の製造・取扱いといった、労働安全衛生法上の「有害業務」への従事が発生しています。
 同法に基づき、ガンやじん肺などの重篤な健康障害を引き起こす恐れのある有害業務の経験者に対しては、離職後も国が費用を負担して定期的な健康診断(原則年2回、じん肺は年1回)を無料で受診できる「健康管理手帳制度」が設けられています。この制度が設定された歴史的背景には、石綿をはじめとする有害物質の健康被害が、ばく露から発症までに15年から50年という極めて長い潜伏期間を要するという特性があります。在職中のみならず、退職・離職後の長期にわたる健康状態を国が継続的に監視・管理し、職業性疾病の早期発見と早期治療を確実にするための重要なセーフティネットとして、1972年(昭和47年)の同法制定時に創設されました。制度上、この権利は国籍を問わず全ての労働者に等しく認められています。

 しかしながら、日本で就労した後に在留期間を満了して母国(ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ等)へ帰国した外国籍労働者を巡っては、現行の制度運用において重大な問題点と障壁が存在します。
 第一に、離職時や帰国時における行政・事業者からの制度周知が極めて不十分である点です。多くの外国籍労働者が、自身に健康管理手帳の交付を受ける権利があることを知らないまま帰国しています。また、技能実習生などは、退職後の在留可能日数が1日程度しかなく、退職後の交付申請を行う余裕が無い為、殆どの有害業務に従事した外国人は、申請することなく帰国しているのが現状です。
 第二に、母国に帰国した後に、「健康管理手帳」を活用して健康診断を継続受診できる現地の指定医療機関(じん肺等の適切な診断や画像読影の品質が保証された機関)の連携・ネットワークが確立されていない点です。さらに、最大のボトルネックとなっているのが「費用の請求(労災保険の補償給付等の請求など)」です。仮に現地で健診を受診できたとしても、その費用を日本の行政(都道府県労働局)へ請求・還付するための手続きが極めて煩雑であり、海外からの個人による申請手続きや送金に対応した公的な一元窓口が存在しません。現地の言語での案内やサポート体制も皆無であるため、実質的に制度の活用を諦めざるを得ない構造となっています。

 現在、国内の外国人労働者数は257万人を超え過去最高を更新し続けていますが、その一方で、帰国した外国籍労働者が実際に「健康管理手帳」を取得し、海外から日本の制度を活用して健康診断を受診している具体的な「活用数値」は、政府の統計上も明確に区分されておらず、実態把握すら進んでいないようです。事実上、海外からの活用実績数値はほぼゼロに等しい極めて限定的な状況にあると推察されます。近年、厚生労働省の労災疾病臨床研究事業において「健康管理手帳制度による健康診断の諸外国での実施のための研究」がようやく開始された段階であり、具体的な救済・管理の数値として機能させるには至っていません。
 外国人材の健康被害リスクは、帰国後も消えることはありません。彼らの命と健康を守り、人権に配慮した受入れ国としての責任を果たすことは、我が国が国際社会で「安全な日本、安心な日本」であり続けるためにも不可欠です。

 したがって、有害業務に従事した外国籍労働者が離職・帰国する際の健康管理手帳の交付申請を事業者・行政が連携して確実にサポートする体制を義務付けるとともに、母国の指定医療機関における受診案内から、健診費用の請求・還付手続き、多言語での相談対応にいたるまでをワンストップで一元的に取り扱う「公的な専門窓口(帰国労働者健康管理センター等)」の早急な設置を強く求めます。これによって制度の形骸化を防ぎ、すべての労働者が等しく健康管理の恩恵を受けられる公正な社会の実現を要望いたします。

33.特定技能、技能実習、育成就労等制度を横断的に、相談や生活・学習支援までを一元的に取り扱う公的部署および総合窓口の設置を求めます。
 我が国の生産年齢人口が急激に減少するなか、経済・社会の基盤を維持し、中小企業・小規模事業者(以下、「小規模事業者等」)の存続を図る上で、外国人材の存在は必要不可欠となっています。かつて1993年に創設された技能実習制度は、国際貢献と技術移転を主目的に掲げながらも、実質的には深刻な労働力不足を補う役割を果たしてきました。その後、深刻な人手不足への対応を明確にした「特定技能制度」が2019年に創設され、即戦力人材の受入れが拡大されました。さらに来年、人材確保と育成を目的とした「育成就労制度」への移行が決定されるなど、外国人材の受入れ枠組みは歴史的な転換期を迎えています。

 しかしながら、このように複数の制度が時代ごとに重層的に整備されてきた結果、受入れの現場においては、制度間の縦割りと煩雑な手続き、そして多角的な支援の分散に起因する重大な問題点が生じています。
 現在、技能実習(および今後の育成就労)は外国人技能実習機構(またはその後継組織)が管轄し、特定技能の手続きは出入国在留管理庁や受入れ分野ごとの各監督省庁に分かれています。これらは実質的に「育成から定着」という一連のキャリアパスであるにもかかわらず、手続きや必要な法律、分野ごとの要件の確認など窓口が横断化されていません。そのため、事業者や登録支援機関・監理団体などの支援団体は、入管の特別措置を含む最新の法改正情報を個別に追いかけねばならず、煩雑な事務作業に追われている現状があります。

 さらに、外国人労働者が日本に定着し、円滑に就労するためには、出入国手続きなどの行政処理だけでなく、生活面のケアや日本語語学学習支援、異文化理解に基づいた仕事の指導方法の確立、さらには孤立を防ぐメンタル相談など、多面的なサポートが不可欠です。これらを監理団体、支援機関または、企業が対応するにも限界があり、現状では、これらを包括的に支援・対応する公的な仕組みが脆弱です。外国籍労働者の必要を切に訴える一方、受け入れた後の対応は、他人任せと言わんとする如く、有効な窓口や団体などありません。個別の解決に導く情報や相談迷子になっている受入れ企業、言葉の壁や文化の違いに悩む外国人労働者、あるいは現場での指導方法に苦慮する事業主が、どこへ相談すべきか分からず孤立するケースが後を絶ちません。外国人材を単なる労働力ではなく、地域社会の一員として「共に生きる」ためのインフラ整備が急務です。

 したがって、特定技能、技能実習、育成就労の全制度を横断的にカバーし、事業者、外国人労働者、支援団体(監理団体・登録支援機関等)が直面する、最新の手続き・法律の案内、入管の特別措置の周知から、生活支援、日本語学習、仕事の指導方法、メンタル相談、諸外国の文化情報の提供にいたるまで、あらゆる機能をワンストップで一元的に取り扱う「総合的な公的部署および相談窓口」を創設することを強く求めます。これによって行政効率化と受入れ環境の抜本的な質向上を図り、小規模事業者等が安心して外国人材を迎え入れ、共に発展できる社会の実現を要望いたします。

34.介護保険法および障害者総合支援法における事業者指定申請手続きの業務範囲の見直しを求めます。
《現状の課題》
◆業務の分断による事業者への過大な負担…行政書士法(第一条の三)に基づき、行政書士は官公署に提出する許認可等の書類作成を業として行っております。一方で、法改正等により、介護保険法に基づく訪問介護等の指定申請は社会保険労務士の業務とされており、行政書士では対応できない部分が生じています。他方で、障害者総合支援法(旧:障害者自立支援法)に基づく事業者の指定申請手続きについては、行政書士の業務と位置づけられています。
◆実務上の矛盾と国民・事業者の不利益…福祉事業の現場においては、例えば「介護保険法の訪問介護事業者の指定申請」と「障害者総合支援法の重度訪問介護事業者の指定申請」を同時に、または一体的に行うケースが多々見られます。しかし現状では、「介護保険の申請は社会保険労務士へ、障害福祉の申請は行政書士へ」と依頼先を分けざるを得ず、事業者にとって大きな時間的・経済的負担となっています。また、同じような性質を持つ許認可申請であるにもかかわらず、窓口や専門職が分断されていることは、国民の利便性に反する事態といえます。

《要望事項》
 上記の実態および国民・事業者の利便性(ワンストップサービスの需要)を鑑み、以下の法改正、制度運用の見直しを検討いただけるよう要望いたします。
①行政書士による介護保険法に基づく事業者指定申請等の業務の取り扱い
 行政書士が本来得意とする官公署への許認可申請業務の一環として、介護保険法に基づく事業者の指定申請および指定申請に関する各種届出ならびに顧問業務等を行えるよう、法的な位置づけの明確化または業務範囲の拡大を図ること。
②社会保険労務士による障害者総合支援法に基づく事業所指定申請業務の開放
 社会保険労務士においても障害者総合支援法に基づく事業者の指定申請手続き等を扱えるように法改正を行い、相互乗り入れを可能とすること。これにより、どちらの専門職に依頼してもワンストップで申請が完結する体制を構築し、国民・事業者の利益に資すること。

IV.経済政策に関する要望

[中小企業における人材確保・定着と生産性向上に向けた要望]

1)日本における人材確保・定着における現状と背景
◆【歴史的な採用難】日本の人手不足感(77%)は世界平均を上回り、300人未満の中小企業における大卒求人倍率は8.98 倍に達しています。
◆【採用頼みの限界】多くの企業が「採用強化」に偏っているが、生産年齢人口の激減や東京圏への流出が進む中、自社単独での獲得競争には限界がみえます。
◆【最低賃金の引き上げ】2020年代に全国平均1,500円を目指す政府方針、人件費上昇への対応(生産性向上)が急務。

2)中小企業で顕在化している問題・課題
中小企業に顕在化している問題・課題として3つの点があげられます。
①採用のミスマッチと発信力不足
◆自社の魅力やビジョン、具体的な業務の意味を求職者に的確に伝えられていません。
◆給与や休日などの条件面だけで勝負しようとし、大企業や他社に競争力で劣ります。
②労働環境の硬直化と身体的・精神的負荷
◆長時間労働や休みの取りにくさ、身体的負荷の大きさが離職の引き金となっています。
◆「経営陣と非管理職」のコミュニケーション不全や、評価制度の未整備(30名以下では約75%が未整備)が従業員のエンゲージメントを下げています。
③経営戦略と紐づかない人材投資の遅れ
◆数年後の事業方針と連動した「人材育成方針」を持つ中小企業は約1割に過ぎません。
◆デジタル化や省力化投資、能力開発費(人材投資)への支出が大企業に比べて著しく遅れています。

3)問題解消に向けて取り組むべき事項と要望事項
上記2で触れた問題に対し、これからの中小企業の経営には、人材を「コスト」ではなく「資本」と捉える意識改革を図ると共に、下記の事項への取り組みが必要と考えられるので、その達成を確実とするための支援を要望いたします。

35.経済産業省の「中小企業省力化投資補助金」や「IT導入補助金」を活用し、自己負担を抑えて業務効率化を一層進めるため、情報へのアクセス、利用しやすさの改善を求めます。
 【業務の見直しと省力化】による労働環境の改善に取り組むべきと考えます。
◆マルチタスク化とチーム制の導入…属人的な業務を標準化し、複数人でカバーできる体制(ジョブローテーション)を作ることで、有給休暇を取得しやすい環境を構築。
◆デジタル・AIを活用した省力化投資…現場の進捗可視化アプリや、介護リフトなどの機械導入により、身体的・精神的負荷を軽減(残業・腰痛の削減など)。

36.ハローワーク求人掲載時における情報開示事項・方法の改善、成功事例などのノウハウを共有・公開するシステムの構築を求めます。
 【共感型採用】への転換とミスマッチ防止に取り組むべきと考えます。
◆「条件」ではなく「理念・ビジョン」で惹きつける…求人票や説明会では待遇だけでなく、経営理念や地域・社会への貢献度を明確に打ち出し、カルチャーマッチを重視した採用にシフトする。
◆インターンシップ・職場体験の機会提供…最終選考前、内定前などに職場体験(実務体験)を挟むことで、入社後の「こんなはずじゃなかった」という早期離職を防止する。

37.自社内で育成・評価制度を運営する人材を確保・育成するための支援を強化すると共に、成功事例やノウハウを共有できる外部人材を利用できる体制構築を求めます。
 【育成・評価制度の言語化】とエンゲージメント向上に取り組むべきと考えます。
◆「役割定義」と「キャリアパス」の明文化…社員一人ひとりに求める人材像や役割を「等級役割定義書」等で言語化し、納得感のある人事評価制度を整える。制度があるだけで定着率は有意に向上が見込めるとの統計がある。
◆定期的な1on1(面談)の仕組み化…月1回・10~15分でも、経営層や上司が「業務の意味の共有」や「個人の悩み」を聴く時間を仕組み化し、孤独感や不満の早期解消に取り組む。

38.《地域の人事部》事業の周知徹底と継続性の強化、より高度で利用しやすい支援体制の構築を求めます。
 《地域の人事部》事業の取り組みを周知徹底するとともに、採択回数の上限(最大3回まで)や、回数に応じた補助率の逓減(2/3→1/2→1/3など)を緩和すると共に、地域の事業者が補助終了後も「定着・自走化(事業のマネタイズ)」が可能となるサポートを要望します。
 すでに一定のノウハウを持つ事業者による伴走支援や勉強会などを通じ、今後立ち上げようとする事業者へノウハウを共有・横展開していく仕組みづくりのより強化、すべての都道府県への設置、より必要とされる地域への定着・拡大を求めます。地域未来投資促進法、小規模事業者支援法、二地域居住促進法といった法制度や、自治体(特定居住促進計画など)としっかり連携し、持続的な支援体制を地域に定着させて頂きたく願います。

 【外部リソースと地域連携】の最大活用に取り組むべきと考えます。
◆副業・兼業・プロ人材のオンライン活用…地域で不足している専門スキル(IT、デザイン、マーケティング等)を都市部の副業・プロ人材をスポットで活用し、自社
人材を育成する体制を整える。
◆「地域の人事部」の活用…単独での採用や研修が難しい場合、地域の企業や自治体が連携する「地域の人事部」を有効活用し、合同研修や共同インターンシップを実施してコストとノウハウの不足を補う。

[地方創生2.0の実現に向けた中小企業の省力化・知財経営・適正取引の推進に関する要望]

1)現状
◆「人材希少社会」の到来と生産性向上の急務…我が国の生産年齢人口は、これからの20年で1,500万人弱(2割以上)も減少する見込みであり、かつてない人手不足が常態化しています。これに対し国は「地方創生2.0」を掲げ、地方の就業者1人当たり年間付加価値労働生産性を東京圏と同水準に引き上げることを目指しています。
◆大規模な「省力化投資」と賃上げ目標の連動…人口減少下で成長を維持するため、国は2029年度までの5年間で官民合わせておおむね60兆円の生産性向上(省力化)投資を実現する方針です。また、日本経済全体で年1%程度の実質賃金上昇を定着させ、2020年代に最低賃金を全国平均1,500 円とする高い目標を掲げています。
◆知財保護と取引適正化の動き…外部リソースとの「新結合」を促す一方で、政府は中小企業の知的財産への侵害に関する実態調査を開始しており、独占禁止法上の指針策定や独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)の地方展開を進めています。

2)課題
◆「60兆円の省力化投資」と「最低賃金1,500円」の狭間での資金・人材不足…中小企業白書でも継続して指摘される通り、地方の中小企業が単独でAIやDXなどの無形資産投資を行うハードルは極めて高いのが実態です。国が掲げる最低賃金1,500円への対応には抜本的な生産性向上が不可欠ですが、その原資となる投資余力とIT人材が圧倒的に不足しています。
◆オープンイノベーションにおける非対称性と知財流出リスク…高付加価値化(新結合)に向けた大企業・CVC等との外部連携において、事業規模や交渉力の格差(優越的地位の乱用)により、中小企業側のコア技術やノウハウが不当に搾取・囲い込まれる懸念が払拭されていません。
◆「知財経営」への移行を阻むコスト負担と価格転嫁の限界…何を特許とし何を秘匿化するかという「知財戦略」のノウハウ不足に加え、特許出願・維持にかかる資金負担や、生み出した知財の価値(コスト)を取引価格に適正に転嫁しきれない現状が、イノベーションの足かせとなっています。

39.「60兆円の省力化投資」を地方中小企業へ確実に届ける伴走支援と共助枠の創設を求めます。
 国が掲げる60兆円規模の省力化投資が大企業に偏在しないよう、AIやロボット等の導入補助金を拡充し、複数年にわたるきめ細かな伴走支援体制を整備することを求めます。また、単独投資が困難な事業者に向け、「地域協同プラットフォーム」等の共助型事業体による共同調達・共同利用への財政・制度的支援を抜本的に強化することを求めます。

40.対等な協業を担保する「標準契約モデル」の普及と適正な価格転嫁の徹底を求めます。
 大企業・CVCとの不条理な知財契約を防ぐため、成果物の帰属やライセンス条件を明確にした「共同開発・投資契約の標準ガイドライン」を策定・普及させることを求めます。さらに、最低賃金1,500円時代を見据え、中小企業が生み出した知財の価値や無形資産投資のコストが正当に価格転嫁されるよう、サプライチェーン全体での監視と指導を徹底することを求めます。

41.知財防衛に向けた法的抑止力と「知財経営支援」の抜本的強化を求めます。
 現在進められている実態調査に基づく独占禁止法上の指針を早期に策定・厳格執行し、不当なノウハウ開示要求等を強力に抑止すること。また、INPIT等の地方展開を急ぎ、「秘匿化戦略」への伴走支援を行うとともに、地方中小企業に対する特許維持年金・出願料の大幅な減免措置を拡充することを求めます。

[参考文献]
・『経済財政運営と改革の基本方針2025~「今日より明日はよくなる」と実感できる社会へ~』内閣(閣議決定)/内閣府
・『2022年版、2023年版、2024年版中小企業白書』経済産業省・中小企業庁

[デジタル共生社会の実現に向けた政策提言と要望]

42.IT弱者に寄り添うデジタルディバイドの抜本的な解消と「デジタル財団(仮称)」の設立を求めます。
 急速にデジタル化が進む中、インターネットに接する機会が少ない高齢者等がその恩恵を受けられないデジタルディバイド問題が顕著になっています。スマートフォンの保有率が低い高齢者層に対し、端末購入が足かせとならないよう、一定期間の無償貸与や端末代金補助制度の創設が必要です。
 また、同世代の人材を活用した対面式スマートフォン教室の拡充を図るなど、高齢者デジタルディバイド問題の解消に向けて「デジタル財団(仮称)」を設立し、国を挙げての推進強化を要望します。

43.利用者目線を重視した「デジタル・サポート体制」の構築と窓口対応の継続を求めます。
 行政のデジタル化は技術の導入のみならず、利用に不慣れな人々が取り残されない仕組みが不可欠です。すべての国民が安心してデジタル化の恩恵を受けられるよう、自治体単位での「デジタル・サポートセンター」の設置を義務化し、対面・チャット・電話による多角的な支援体制の構築を求めます。
 同時に、身体的能力等によりデジタル化に対応できない高齢者や障害者等に対しては、あらゆる手続きにおいて電子申請を義務化するのではなく書面申請の受付も可能とし、窓口でのサポートが継続的に行われることを求めます。

44.国民の時間価値を向上させる「全面オンライン行政」と「共通データ基盤」の構築を求めます。
 行政手続きのための窓口訪問は、国民の生活リズムに大きな支障を与え、貴重な時間の損失となっています。この課題を解決するため、行政手続きのオンライン化をデフォルト(基本)とし、全国一律で24時間いつでも完結できる仕組みへの転換を求めます。
 また、各省庁や自治体が個別に管理するデータを連携させ、一度入力した情報は二度と入力不要とする「ワンスオンリー」を実現する共通データ基盤の構築と、自分の個人情報へのアクセス履歴を本人が確認できる透明性の高い仕組みの法的担保を求めます。

45.小規模事業者等の経営を効率化する「ビジネス向け統合オンラインポータル」の創設と「簡易DXモデル」の提供を求めます。
 小規模事業者等は、社会保険や税務、補助金申請など、縦割りで複雑な行政手続きに多大な時間と労力を奪われています。あらゆる手続きをワンストップで完結でき、AIを活用して最適な補助金を通知する「プッシュ型支援」を備えた「ビジネス向け統合オンラインポータル」の創設を求めます。
 また、初期投資への不安からDX化に踏み出せない事業者のため、国主導で「スモールスタートDXモデル(簡易DXモデル)」をパッケージ化して提供し、初期費用の無償化やライセンス料補助といった制度的枠組みの整備を求めます。

46.中小・小規模事業者のDX推進を後押しする「DX人材マッチング支援」と支援団体によるサポート拡充を求めます。
 小規模事業者等ではいまだにアナログ作業が多く残る一方、DX推進に不可欠な専門的デジタル人材の確保において、大企業に比べ不利な立場にあります。国がハローワークのような公的なデジタル人材マッチングプラットフォームを構築し、企業と人材の効果的なマッチングを支援する体制を整えることを求めます。
 さらに、小規模事業者に身近な中小企業支援団体や顧問士業が行うデジタル化支援策(会計・労務ソフトの導入支援等)に対して、補助金の拡充等による活動の円滑化を求めます。

47.デジタル化の推進に伴う事務負担への配慮と「電子帳簿等保存制度」における柔軟な対応を求めます。
 国による電子化の流れは理解するものの、小規模事業者の多くは専任の経理担当を雇う余裕がなく、事業主本人がすべての業務を担っています。限られた時間と事務量の中で精一杯記帳や原始記録の保存に努めている事業主にとって、電子帳簿等保存制度などの新たなデジタル化対応は、時間的にも費用的にも困難な場合が少なくありません。対応困難者が多数を占めるという現実を認識し、これまで通りプリントアウトした原始記録の保存を認めるなど、事務負担軽減に十分配慮した施策の実施を強く求めます。

[金融政策に関する要望]

48.スタートアップ企業・法人格なき社団の口座開設の審査基準の緩和を求めます。
 スタートアップ企業・法人格なき社団の口座開設が難しい状況となっています。2018年以降金融庁が進めているマネーロンダリング対策の影響によるものと思われます。結果的に2023年度のゆうちょ銀行だけでも約4,000件もの法人格なき社団の口座開設の申請が断られたとの新聞報道があります。
 多くの団体にとって口座が開設できないことによる資金面の管理で大きな負担を強いられています。また、外国人労働者の口座開設のニーズも今後大きくなることが見込まれます。金融資産保全のため厳格な審査基準が必要であることは理解しますが、事案に応じ柔軟で合理的な口座開設審査基準の緩和・設定を望みます。

49.海外からの事業収入が受金出来るよう早急な対応を強く求めます。
 現在の金融機関の対応ではスタートアップ企業の海外受金口座を開設することが出来ません。マネーロンダリングの防止は非常に重要な課題であることは承知していますが、事業が順調に進む一方で金融機関の受入口座が開設できません。必要とされた書類は全て提出し面談を受けても「今回は見合わせます」という回答で開設することが出来ない事例が存在します。
 また、海外からの送金者に問題があった場合、日本国内の事業者に特に問題が認められなくても詳しい事情説明もなく、弁明する機会も与えられないまま事業用口座が凍結される事態が長期にわたり継続し、税務処理や事業活動に支障をきたす事案もありました。このような現状であることを認識いただき、金融行政において海外からの受金に関する規制の在り方や方法を検討し、火急に対応いただきますようお願いいたします。

V.デジタル化に関する要望

 あらゆる分野でデジタル化が急速に進展する中、大企業と小規模事業者との間に生じる「デジタル格差」や、それに伴うセキュリティリスクへの対応が深刻な課題となっています。今回のデジタル化に関する要望では、「小規模事業者等へのサポート」および「誰一人取り残さないデジタル社会の実現」を2大方針として現場の小規模事業者等が安全に、かつ最大限デジタルの恩恵を享受できるような実効性のある支援策を求めます。

50.生成AI活用の促進と安全な利用環境の整備を求めます。
 1つ目の柱は、小規模事業者等の生産性を向上させる「生成AI活用の促進と安全な利用環境の整備」です。
《現状と課題》
 現在、生成AI技術は急速に進化しており、業務効率化や人手不足解消の切り札として大企業を中心に導入が進んでいます。しかし、小規模事業者等においては「どのように業務に活用すべきか分からない」「機密情報の漏洩や著作権侵害などのセキュリティリスクが不安である」といった理由から導入に踏み切れず、大企業との間のデジタル格差がさらに拡大する懸念があります。

《要望事項》
 小規模事業者等が安心してAI技術の恩恵を享受し、労働生産性を飛躍的に向上させるためには、国が主導して「小規模事業者向け生成AI 活用ガイドライン」を策定・提示することが不可欠です。また、AIツールの導入費用や運用研修コストに対する補助金の拡充、安全な利用環境を構築するためのサイバーセキュリティ対策支援を求めます。

51.セキュリティ対策支援の拡充と簡易診断ツールの提供を求めます。
 2つ目の柱は、サイバー脅威から小規模事業者等を守る「セキュリティ対策支援の拡充と簡易診断ツールの提供」です。
《現状と課題》
 行政やビジネスのデジタル化、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応に伴い、小規模事業者等においてもPCやネットワークを利用した業務が日常化しています。その一方で、サプライチェーンの脆弱なリンクを狙ったランサムウェアなどのサイバー攻撃が急増しており、セキュリティ対策が不十分な小規模事業者等が標的となるケースが後を絶ちません。万が一、被害に遭った場合は事業継続が困難になるだけでなく、取引先へも多大な影響を及ぼすリスクがあります。しかし、小規模事業者等には専門のIT人材や多額のセキュリティ投資を行う余力はありません。

《要望事項》
 国が主導して、専門知識がなくても自社の脆弱性を把握できる「簡易サイバーセキュリティ診断ツール」を無償で提供することを求めます。あわせて、セキュリティソフトの導入やインフラ強化にかかる費用への助成措置を大幅に拡充することを要望します。

52.決済手数料の引き下げと小規模事業者等への負担軽減措置を求めます。
 3つ目の柱は、キャッシュレス化の進展に伴う「決済手数料の引き下げと小規模事業者等への負担軽減措置」です。
《現状と課題》
 国が進めるキャッシュレス決済の普及により、消費者側の利便性は向上し、小規模事業者等にとってもレジ業務の効率化や現金管理の手間削減といったメリットが生まれています。しかし、事業者が決済事業者に支払う数%のキャッシュレス決済手数料は、薄利で経営を行っている小規模事業者等にとって極めて重いコスト負担となっており、利益を圧迫する大きな要因となっています。特に、昨今の物価高騰による仕入れ価格の上昇に苦しむ現状において、決済手数料の負担は事業継続の死活問題です。

《要望事項》
 欧州などに倣い、国が決済手数料の上限規制を設けるなどの法的な介入を行うことを求めます。さらに、小規模事業者等を対象とした手数料補助制度の創設や、安価で一元管理が可能な公的決済プラットフォームの整備を要望します。

53.決済代行会社の倒産リスクへの対策と売上金保護制度の創設を求めます。
 4つ目の柱は、予期せぬ決済代行会社の破産から小規模事業者等を守る「決済代行会社の倒産リスクへの対策と売上金保護制度の創設」です。
《現状と課題》
 キャッシュレス決済が社会インフラとして定着する中、決済代行会社を介した取引が一般化しています。しかし、クレジットカード決済代行会社「全東信」の破産手続き開始に見られるように、代行会社の経営破綻により、小規模事業者等へクレジットカード売上金が未入金となる事態が発生しています。キャッシュレス化を推進しながらも、決済プロセスにおける信用リスクが資金力の乏しい小規模事業者等に丸投げされており、未回収による連鎖倒産や深刻な資金繰り悪化が大きな社会問題となっています。

《要望事項》
 国が推進するキャッシュレス化の負の側面から小規模事業者等を守るため、決済代行会社に対する財務健全性の審査や監査基準の厳格化(法整備)を求めます。あわせて、万が一決済代行会社が破綻した際にも、事業者の売上金が確実に保護・補償されるセーフティネット(官民連携の保証制度や供託金の義務化など)の早期創設を強く要望します。

54.行政デジタル手続きのUI/UX改善とアクセシビリティの向上を求めます。
 5つ目の柱は、あらゆる世代と地域を取り残さない「行政デジタル手続きのUI/UX改善とアクセシビリティの向上」です。
《現状と課題》
 行政手続きのオンライン化が進む中、マイナポータルをはじめとする政府や自治体のシステムは、依然として操作が複雑であり、利用者目線に立った使いやすさ(UI/UX)が十分に確保されているとは言えません。特にスマートフォンの操作に不慣れな高齢者や、多忙を極める小規模事業者等の経営者にとって、エラーの多発や分かりにくい案内はデジタル化への不信感を募らせる原因となっています。

《要望事項》
 真の「全面オンライン行政」を実現するためには、誰一人取り残さないアクセシビリティの確保が不可欠です。国は、すべての行政アプリやウェブサイトにおいて、直感的で分かりやすいデザイン基準である「標準UI/UXガイドライン」を徹底し、音声案内やAI による入力補助機能を拡充することを求めます。あわせて、エラー発生時に即座にオンライン上で解決できるサポート体制の強化を要望します。

Ⅵ.その他事項に関する要望

55.民法における遺留分制度についての変更を求めます。
《背景・現状の課題》
◆実態との乖離…現在の遺留分制度は相続人の利益保護に一定の役割を果たしているものの、家族形態や価値観、人間関係が多様化した現代社会の実態に適合しているとは言い難い状況です。
◆自己決定権・財産権の制限…十分な判断能力を持つ者が自由意思で作成した遺言に対し、国が一定割合の財産承継を強制することは、被相続人の自己決定権や財産権の観点から見直しが必要です。長年絶縁状態にある相続人であっても「形式的血縁関係」のみを理由に遺留分請求が可能であり、実際の人間関係や被相続人の合理的・切実な最終意思(介護への報い、事業承継、親族との関係など)よりも優先されています。
◆円滑な事業承継の阻害…中小企業においては、遺留分問題が「株式分散」「事業資金流出」「経営不安定化」「後継者負担増大」などを引き起こし、円滑な事業承継を阻害する要因となっています。
◆自己決定権との調和…財産は本人が長年努力して築き上げたものであり、本人の意思が最大限尊重されるべきです。高齢者保護や不当な誘導防止を考慮し、意思確認が担保される公正証書遺言による場合に限り、遺留分割合の縮小を検討する必要があります。

《要望事項》
①遺留分割合の縮小…現行の「法定相続割合の2分の1及び3分の1」とされている遺留分割合について、自己決定権をより尊重する観点から縮小すること。ただし未成年者については、生活基盤保護の観点から現行の割合を維持すること。
②事業承継資産に対する遺留分適用除外…非上場株式および事業承継に必要不可欠な事業用資産については、遺留分算定対象から除外すること。

56.特定技能における受入れ及び運用制度の見直しを求めます。
《背景・現状の課題》
◆全国一律の上限設定による停止措置…令和8年3月27日付の通達により、外食業分野における特定技能1号の在留者数が本年2月末時点で4万6千人に達し、5万人の上限に迫っていることが示されました。これに伴い、同年4月13日以降に受理される在留資格認定証明書の交付申請や変更許可申請を原則不交付・不許可とする運用方針が示されましたが、これは現場の実態を無視したものです。
◆地方の深刻な人手不足…外食業は外国人材にとっての就労の入口であり、慢性的な人手不足を補う生命線です。人材の偏在が激しく、都市部で充足していても地方では深刻な欠員が生じており、全国一律の数値での一斉停止は地方の小規模事業者の事業継続を直撃します。
◆現場の混乱と経済的損失…今回の措置により、技能実習(医療・福祉施設給食製造作業等)からの移行や、特定活動(移行準備)からの変更までもが制限・遅延され、現場に多大な混乱を招いています。育成してきた人材を定着させ、将来の地域経済の戦力として活用する戦略的視点が欠落しており、計り知れない経済的損失が生じます。実態に即さない硬直的な運用は、企業や地域の将来を損なう危険性があります。

《要望事項》
①受入れ上限数(5万人)の即時見直しと大幅拡大…上限に達する見込みを理由とした交付停止措置を撤廃し、外食産業の実態に見合った受入れ枠を再設定すること。
②地域格差を考慮した柔軟な運用制度の構築…全国一律の上限管理ではなく、人手不足が顕著な地方や小規模事業者に対し、優先的な受入れ枠の割り当てや手続きの簡素化を図る特例措置を設けること。
③人材定着・育成を阻害しない移行措置の確立…技能実習生や特定活動からの移行については、上限枠の制限を受けずに円滑に許可される仕組みを構築し、企業が長期的な視点で外国人材を育成・活用できる環境を整備することを求めます。

57.在留資格「経営・管理」の要件緩和を求めます。
《背景・現状の課題》
◆要件基準の厳格化…令和7年10月16日の法改正施行により、要件基準が大幅に厳格化されました。
◆既存在留資格者への影響…主要な要件における「資本金(事業規模)の3,000万円以上への大幅な増額」については、既存の在留資格者の大半が満たしていない現状があります。令和10年10月までの経過措置は設けられているものの、極めて厳しい状況にあります。

《要望事項》
①資本金3,000万円以上の要件基準の減額を要望します。
②新基準適用となる在留資格の更新対象者への柔軟な対応を望みます。

58.建設業許可における専任技術者の実務経験要件の緩和を求めます。
《背景・現状の課題》
◆深刻な「担い手不足」…現在の建設業界は、若手入職者の減少、高齢化の進展、そして「2024年問題」に端を発する労働時間規制の強化などにより、深刻な担い手不足に直面しています。地域インフラの維持・補修や災害復旧を担う中小建設事業者が事業を継続するためには、実効性のある規制緩和と柔軟な制度運用が不可欠です。
◆実態との乖離…一般建設業の専任技術者における実務経験基準が実態と乖離しており、多くの技術者のポテンシャルを阻害する要因となっています。

《要望事項》
 建設業法第7条第2号ロに規定されている「建設業に係る建設工事に関し10年以上実務の経験を有する者」という要件について、「7年以上実務の経験を有する者」への緩和を要望します。

59.戸籍広域交付制度の利用における緩和措置を求めます。
《背景・現状の課題》
◆利用手続きの制限…令和6年3月1日から始まった戸籍広域交付制度により、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍などを請求できるようになりましたが、請求できるのは本人に限定されており、本人が直接窓口へ出向く必要があります。

《要望事項》
 国民の利用改善のため、郵送手続き、および弁護士・司法書士・行政書士等の資格者代理人への委任による交付請求手続きが行えるよう、制度の緩和措置を求めます。

*障害:「障害」という言葉が持つ否定的な印象に対する配慮の必要性を認識しています。そのため、状況に応じて「障がい」などの代替表記を使用することもあります。しかし、本要望書においては、標準的な表記である「障害」を使用することといたします。