2023年度 中小企業・小規模事業者の存続と発展を目指して 「国への要望書」

2023年08月03日 ティグレ連合会

目次

Ⅰ.はじめに

 ティグレは、中小企業・小規模事業者(フリーランスを含む以降、小規模事業者等)とそこで働く従業員、家族の「いのちとくらしを守る」を理念とし、平和・人権・福祉・環境を大切にした真に豊かな活力のある社会の発展に寄与することを目的に1973年に創立したあらゆる業種の事業者が集う全国約3万者の組織です。

 2022年2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻は、1年半を経過した今日も終息の目途が立っていません。武力での解決を目指すのではなく、対話での解決に向けた停戦、終戦の実現を目指し、日本の積極的かつ力強い行動を求めます。

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、様々な支援策によって小規模事業者等は救われてきました。しかし、まだまだ厳しい状況であるのはご承知の通りです。小規模事業者等の実態把握とこれからも支援を必要とする事業者へのきめ細やかで即効性のある政策の実施を求めます。

 6月30日に発表された政府税制調査会の答申、【わが国税制の現状と課題ー令和時代の構造変化と税制のあり方ー 】には、「あるべき税制について一人ひとりが関心を持ち、理解し、議論に主体的に参画することを目指すとともに将来の税制について考えてほしい」また、「税制のあり方についての議論に参加するのは国民の代表だが、租税と民主主義の関係を踏まえれば、私たち国民は代表者を選出することを通じてその議論に参加するほか、様々な場で、納税者として、あるいは有権者として意見を発出し、議論に参加していくことが求められる」と書かれています。

 私たちは、本年3月にスウェーデン国税庁が行ってきた改革の経過や変化を現役職員が解説した本「恐れられる機関から信頼されるサービス機関へ 〜 スウェーデン国税庁改革ストーリー 〜」の翻訳版を発刊しました。そこには「システムと環境整備の推進」、「事後のミスを正すより事前に正しく導く」、「脅かす強制から信頼と順法精神の育成」が重要であると書かれていました。システムと環境整備の推進については、すでにインボイス制度の導入や電子帳簿保存法の改正等、デジタル化推進により急ピッチで進められていますが、税法の知識向上は進められていません。国民が税制に興味を持ち、議論に積極的に参加するためには、年末調整制度を廃止し主権者意識の向上を図る必要があります。

 一人ひとりが国のあり方について積極的にかかわるためには、全員確定申告と納税者主権の確立「納税者権利憲章の早期制定」を強く求めます。

 政府の積極的働きかけによって大企業の賃金アップが実現したことは素晴らしいことと理解していますが、一方で下請け企業へのしわ寄せが懸念されます。小規模事業者等はまとまって声を上げる力や機会が少なく、結果として単価アップが難しく、生産性が低くなっているのが現状と考えます。今こそ大企業が小規模事業者等に対し「分配はコストではなく持続可能な成長への投資」として適正に分配が行われるような社会の実現へ向けた施策を求めます。

 最後になりますが、小規模事業者等とそこで働く人々にとって金利上昇は収入のアップが実現できていない現状から非常に懸念しています。どうか慎重に判断されることをお願いいたします。

Ⅱ.申告納税制度に関する要望

1.納税者権利憲章の制定を求めます。
 令和4年度税制改正にて納税者の義務が法律に明記されました。
 そもそも納税者の権利についての明文規定がない中、納税者の義務だけが明記されることは納税者の権利が認められているとは言い難いと考えます。いち早く納税者権利憲章を制定し主権者としての立場を明確にすべきと考えます。
 わが国の申告納税制度は、納税者が税法に基づいて自分で税額を算出した申告書を税務署に提出することで納税義務を確定させることであり、税務行政の適正な執行とともに納税者の協力が不可欠です。そのためには「法に定められた納税者の権利」が尊重されたうえで税務行政が行われなければなりません。主権者たる納税者の権利保障と税務行政の適正な執行のために「納税者権利憲章」の早急な制定を求めます。

 その制定においては納税者の権利を守るために次の3点を盛り込むことを強く求めます。
1)主権者たる納税者を善良なる者として取り扱われるものであること
2)納税者が自己について国が保有している情報の開示を求める権利があること
3)独立した第三者機関での公正な権利救済がなされること
 (国税不服審判所が設置されているが、大多数は国税職員が占めており独立した第三者機関とは言い難いこと)

2.年末調整制度の廃止と全員確定申告制度の導入を求めます。
 年末調整制度は、事業者が従業員の納税について計算や納税作業を代行しておこなうため給与所得者は税制度への関心や理解が薄くなりがちです。納税者が、自らの納税について理解することは不可欠です。平成15年の徴税コストは100円当たり1.78円ということです。源泉徴収による年末調整制度が徴税に大きく貢献しているとは思いますが、中小企業・小規模事業者にとって年末調整事務のコストは小さなものではありません。納税者の正しい税知識の醸成のため、また、中小企業・小規模事業者の事務、経費負担の軽減のためにも、年末調整を廃止し全員確定申告制度を求めます。

3.所得税の所得再分配機能を強化させる税制を求めます。
1)累進課税を強化すること
2)分離課税制度を廃止し総合課税へ一本化すること
3)居住用財産など生活関連資産の譲渡等への柔軟な対応を行うこと
4)人的控除の拡大により課税最低限を引上げること(特に基礎控除を)

4.記帳義務を適正に履行できない納税者等への対応策を求めます。
 令和4年度税制改正で所得税及び法人税の税務調査において、証拠書類を提示せずに簿外経費を主張する納税者などへの対応策として、必要経費不算入・損金不算入の措置が講じられました。
 この改正の運用においては各事業者の経営環境を踏まえた柔軟な対応を要望いたします。その上で事務が困難な事業者に対しては今後も記帳指導の実施等で適正化を図る取組みの支援及び、必要な場合は申告納税制度が掲げてきた「所得課税」における推計課税での対応を求めます。

5.消費税の軽減税率を廃止し税率を5%にすることを求めます。
 事務負担が多大な軽減税率を廃止し、単一税率に戻し負担を軽減させることは税の簡素化と徴収コストの低減にも寄与すると考えます。また当面の間、消費税率を5%に戻すことを要望いたします。

 国税庁が発表した 2021年度末の国税滞納残高(8,857億円)のうち実に40%が消費税の滞納(3,551億円)となっています。消費税の滞納残高には年率9%近くの延滞税が課され、税金債務が増えていく状況です。つまり、納税負担が厳しい税金なのです。また、これらの滞納税額があると銀行からの融資は困難となり、事業継続に大きな支障となります。さらに令和4年8月5日発表の「納税の猶予制度の特例」適用後の状況によると特例猶予の適用額1,517,647百万円に対し完結された額は1,378,766百万円(90.8%)であり、残りの138,881百万円は既存の猶予制度の適用を受けたり、納税を相談中であります。この既存制度適用・納税相談中の額のうち「消費税及び地方消費税」が占める額は(105,670百万円 70.1%)であります。消費税は3%から段階的に引き上げられ10%となりました。消費税率が高くなればなるほど、経営難に苦しむ課税事業者は納税が困難となり、経営にさらなる悪影響を及ぼしていると考えています。

 不足財源は、法人税・所得税の税率改定等を行い、財政支出の無駄を省くことで対応していただきたいと考えます。企業が内部留保をため込み、高額所得者への様々な税制上の恩恵は社会に還元されているとは言えません。今、中小企業・小規模事業者は事業活動や生活が困窮しており、さらに苦しむことが予想とされ、事業での利益率が低い事業者にとって税率10%の消費税は非常に重たいものになっています。税の再配分で社会の相互扶助を実現できるような税制にしていただきたいと思います。

6.インボイス制度の凍結・廃止を求めます。
 中小企業・小規模事業者の中には取引先や消費者との関係に配慮が欠かせず消費税を正しく転嫁できない状況があります。現に、免税事業者が取引において値引きを求められたり、排除されるような事態が起こっています。確かに請求書等の書類上は、消費税を受け取っているようになっていますが、実際はその分の単価を減額され税込みの総額は変わらない状況が多いと言えます。インボイス制度も同様の問題です。加えて、コロナ感染拡大の経済的影響が今も残り、ウクライナ戦争による物価高がより経済活動を困難な状況にしています。したがって、インボイス制度の凍結を強く求めます。

 適格請求書は課税事業者しか発行できないため、建設業や鉄工所などのいわゆる一人親方、近年増加したフリーランスなどの免税事業者は、インボイス制度のもと、課税事業者となって消費税を納めるか、あるいは商品やサービスの価格を消費税分下げなければ取引ができなくなる可能性が強まります。それは経済的にも事務的にも負担を強いることになるのは必至で、小規模事業者にとっては事業継続の瀬戸際に追い込まれるケースが出てくると予想されます。そもそも国内で事業者が行う取引は、課税事業者であろうと免税事業者であろうと原則消費税を含めた金額で取引しています。
 税制改革法10条2項には、消費税の「本質的な課税標準」はあくまで「課税売上額から課税仕入額を差し引いた金額」(付加価値額)であるとしています。これは仕入税額控除をしなければならないと規定しているのです。であるにも関わらずインボイス登録事業者でない者との取引は仕入税額控除できないのはおかしいと考えます。これらを踏まえインボイス制度の廃止を求めます。

 また平成21年消費税申告処理・状況表(国税庁)、平成22年国勢調査(総務省)及び国税庁特別集計(平成21年)により推計した資料によると全事業者数に占める免税事業者数は法人・個人合わせて推計で59.3%でありますが、その免税事業者が事業によって取引していると推計される課税売上高は全体の課税売上高のわずか1.7%であります。税を公平に徴収し、納税をきちんとしてもらうということでは、これらの免税事業者がインボイス制度も含めた税制に対応して納税することは必要なことかもしれませんが、事業基盤・生活基盤が脆弱な免税事業者にとっては今後死活問題とならざるを得ないといえます。
 さらに取引先との事業継続のため課税事業者となり新たに納税事業者となる小規模事業者は利益・所得の減少が予想され、生活困難者となる可能性があります。軽貨物ユニオンの方々が各省庁に訴えた「年収300万円。経費引いて200万ぐらいの儲けで、月の生活費は約16万円。消費税を簡易計算すると約15万円。ほぼ1か月分の生活費を税金として納めるのか」ことが一例です。

 消費税は導入以来、小規模事業者の納税事務の負担と納税の支払能力に配慮してきました(免税点制度・簡易課税制度など)。しかし今回のインボイス制度はこの納税事務負担の配慮を軽視したものであり、制度導入による取引先との交渉・確認など精神的負担や事業継続の可否を検討しなければならない苦悩など、事業者に与える悪影響が多すぎます。
 インボイス登録事業者となる事務処理から始まり、インボイス書式の変更、取引先とのやり取り・確認作業、帳簿記載事項の追加、確定申告時の計算の煩雑さなど事務作業の負担の増加は計り知れません。激変緩和措置として税制改正を行いましたが小規模事業者にとっては、より判断が必要となる処理が増えています。現状、凍結・廃止が困難であるならば、この予想されていることを踏まえ、適格請求書等を全国的に数種類の様式に統一し、AIを活用したスキャンや自動読み取りなど事務の簡素化につながる法的な整備をお願いします。さらに小規模事業者を事務処理上支援していく会計事務所等への補助金創設を進めるよう求めます。

 また、経過措置のみなし仕入れ(80%)を恒久的措置、2割特例と少額特例の恒久的措置および対象事業者拡大への移行を求める意見があることも伝えさせていただきます。まだまだ小規模事業者にとってインボイス制度への理解は不十分で、より一層の周知と理解が必要ではないでしょうか。税の三原則である「公平・中立・簡素」の原則からかけ離れたこの制度を推し進めていっては不安と混乱は避けられないように感じます。決して税収をあげるためだけの制度であってはいけません。以上のようなことからこれらのことが解決できるまでの凍結・廃止を求めます。

7.納税環境の整備(税務調査における事前通知の改善)を求めます。
 平成23年に国税通則法が改正され、「税務調査を開始する時の事前通知」と「処分の理由付記」が義務付けされましたが、納税者への「事前通知」は口頭とされています。
 納税者にとって口頭通知は突然であり、心の準備も出来ていない状況です。調査経験の有無にかかわらず、口頭だけでの通知では十分に理解することが困難なことから「文書」での事前通知の徹底と無予告時の税務調査において「事前通知」を行わなかった理由の開示が常に行われることを求めます。

8.電子帳簿等保存制度の対応困難者への配慮を求めます。
 令和5年度税制改正において「相当の理由があると認める場合、その電子取引データの出力書面の提示・提出の求め及びその電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておけば、保存要件を不要として、電子取引データの保存を可能とする」と新たな猶予措置が設けられました。
 しかし、小規模事業者のほとんどは経理事務担当者を雇う余裕はなく、事業者本人が経理事務を含めすべての事業活動を行っています。また、デジタル化への対応(時間的・費用的・能力的等)が十分にできておりません。電子化の流れは国の政策であり、社会の流れであることは理解しておりますが、対応の困難な事業者が現実には多くいることから事務負担軽減に配慮した施策の実施を求めます。

9.役員報酬の全額損金算入を求めます。
 小規模・零細規模の法人は(以下小規模法人)、社長・役員が経営をしながら現場で営業や業務を行い、また経理事務や総務・人事などのすべてのことを行っている法人が大多数です。そして会社を存続させるため、従業員の生活のため日々頑張っています。そうした会社経営の中で、計画的に利益を出したり、毎期の利益を予測することは非常に難しいことです。企業努力をしたり、たまたま利益率の良い仕事が取れたり、運が良かったりなど日々の頑張りの中で利益がもたらされることがありますが、これらを事前に予測し、計画したものしか(定期同額・事前確定給与)損金として認められないのでは、この恵みを、小規模法人の経営や企業成長にうまく活用することはできません。小規模法人には年俸制はそぐわず、業績の結果、役員給与は決定されるべきと考えます。資本金1,000万円(もしくは500万円)以下の小規模法人に関しては、同族会社であろうが役員の給与・賞与について全額損金算入にしていただきたい。せめて利益連動型的処分を認める制度の実施を求めます。

Ⅲ.労働と社会保険制度に関する要望

10.労働保険、社会保険の保険料の算定期間を1〜12月の暦年とし、算定の対象とする賃金から通勤手当(所得税非課税枠まで)を除き、公平で簡素な制度にすることを求めます。
 社会保険料の定時決定(算定基礎届)は、4月から6月の報酬で保険料が決定され、その後に固定的賃金の変動があり、2等級以上の標準報酬月額の変更があった際にはその度に随時改定の届け出をしなければなりません。
 定時決定の算定期間が3か月の平均であることから公平に標準報酬月額が決定されているとは言えず、また固定的賃金や所定労働時間が変わる度に随時改定の届け出の要否を検討することは、事業主にとって煩雑な事務負担となっており、煩雑さ故にルール通りに運用できていないケースが多くあります。

 また、労働保険料は4月から翌年3月、社会保険料は4月から6月、所得税の年末調整は1月から12月とバラバラの算定期間によって、それぞれの保険料や源泉徴収税額を計算することになっています。これらの計算期間の違いが、事業者にとって大きな事務負担に繋がっています。

 さらに通勤手当について、社会保険料及び労働保険料はその算定の対象賃金に含めるのに対して、源泉所得税の計算では原則非課税として給与金額に含めません。通勤手当は、厚生年金法第3条第3項の「労働の対償として受けるもの」ではないと解されます。その根拠は以下の点からも明らかです。
1)所得税法では実費弁済的なものであるから非課税としている
2)昭和27年厚生省の疑義解釈において「通勤手当は被保険者の通常の生計費の一部にあてられているのであるから報酬であると解する」としているが実費弁済とする所得税法との解釈に矛盾がある。
3)過去にも国会の委員会で何度も取り上げられているが、保険料収入の減少を理由に結論を出していない
4)出張旅費や赴任旅費、作業衣、制服等は実費弁済的なものとして報酬に含まれない
5)在宅勤務者が自宅勤務の日に一時的・臨時的に出社した場合の通勤費は算定対象にならない

 源泉所得税と社会保険・労働保険料の計算期間及び計算対象報酬を合せることにより事業主から統一したフォーマットの賃金報告書類の提出を受けて、国が一括して源泉所得税、社会保険・労働保険料を計算し、徴収・付加する方式に変更することを求めます。
 このことにより、雇用主および当該官庁の事務的負担を大幅に軽減することができます。

11.労災第2種特別加入の対象拡大と第1種特別加入との合併及び、加入団体・事務委託制度以外の簡易な加入手続き制度の創設と一人親方への報奨金制度の導入を求めます。
 現在の労災の事業主の特別加入制度は、第1種特別加入に加入していても従業員がいなくなると第2種特別加入に変更しなければなりません。第2種特別加入に加入していても従業員を雇うと第1種特別加入に変更しなければなりません。小規模な事業主にとっては、行ったり来たりで手続きが煩雑です。
 小規模事業主は自らも危険な業務に従事していることが非常に多く、労働者に準じて労災保険により保護されるべき者がほとんどです。このため、第2種特別加入の一人親方、特定作業者の適用範囲をすべての業種に拡大し、第1種特別加入の対象となる事業主を包含した制度への一本化を求めます。つまり、従業員の有無にかかわらず一定の規模以下の事業所が加入できる「労働災害保険(仮称)」制度の創設を求めます。
 また、特別加入制度は現在、労働保険事務組合又は一人親方等の団体を通じて加入することとなっているため保険料以外にも手続きに要する費用負担が必要になります。事業主の費用負担軽減のため事業主の直接手続きでも特別加入できる制度への改正を求めます。
 また、第2種特別加入での報奨金制度を求めます。

12.飲食業、宿泊業について、個人事業所への従業員の厚生年金加入の義務付けや社会保険の短時間労働者への適用拡大に対して、中小企業への適用緩和と事業主負担分の保険料率軽減を求めます。
 社会保険料は労使折半であり、社会保険加入の適用範囲拡大についての配慮を求めます。特に飲食、宿泊業については、従業員の厚生年金加入を義務付ける個人事業所の範囲を拡大する制度改正の本格検討に入り、令和7年の通常国会で必要な法改正を目指すとの発表がありました。
 また、平成28年10月から通常の労働者と比較した場合に1週間の所定労働時間または1か月の所定労働日数が4分の3未満の短時間労働者に対して健康保険・厚生年金被保険者に適用される制度が始まっています。これが令和4年10月以降は常時100人超となり、さらに令和6年10月以降は常時50人超の事業所まで適用範囲を拡大する予定となっています。また勤務期間の対象が1年以上使用見込みから2か月を超えての使用見込みの労働者が対象となるなど、大幅な期間短縮がなされるものとなっています。
 これらの制度改正は社会保険料の負担増加により中小企業・小規模事業者の大量倒産に繋がる可能性があります。したがって改正内容の規模要件の緩和と中小企業には、適用事業所になった場合、週20時間以上30時間未満の労働者の過半数が加入に反対した時は、原則加入しないですむ制度の創設、社会保険料の事業主負担の料率引下げを求めます。あわせて大企業については、事業主負担分に加え社会保険制度全体を支える「支援金(仮称)」の創設を求めます。

13.最低賃金引上げにともなう社会保険の被扶養者の所得上限(130万)及び所得税扶養控除の所得上限(103万)の引上げを求めます。
 現在、世界的にすすむエネルギー資源や小麦等の不足と円安による影響で物価高が進行中です。その中で最低賃金の引き上げを含む実質賃上げが社会的要請になっております。最低賃金の引き上げは、ここ数年、政府主導ですすめられておりますが、130万や103万基準といわれるものによって最低賃金の引き上げが、パートなどの非正規労働者の所得の増加に寄与するのではなく、年間の労働時間の調整による働き方が一般化しています。つまり非正規労働者の多くは、扶養の範囲で働くのが希望であり最低賃金引上げに伴い、労働時間を減らすこととなり、ますます人手不足に拍車を掛けています。
 このことは女性の社会進出を促進する立場から、厚生年金の3号被保険者制度の見直しや、税制や社会保険の強制適用範囲の拡大など抜本的見直しが必要となっています。
 しかし、抜本的改革はすぐにできるものではなく、国民的議論と合意が必要です。したがって、当面は最低賃金の引上げに伴う人手不足解消のため各所得上限の緩和策を求めます。

14.国民健康保険料の低所得者への負担軽減を求めます。
 国民健康保険の加入者は、高齢者や自営業者、農業従事者など低所得者層が多く、低所得者に負担が大きい構造になっています。多くの自治体は保険料を、「所得に対する賦課(所得割)」、「加入者一人あたりの賦課(均等割)」、「世帯あたりの賦課(平等割)」の合計としています。
 協会けんぽが被保険者数に関係なく、介護保険を合わせて約12%(半分は事業主負担)であるのに対し、年間の所得が300万円程度で、4人家族世帯の国民健康保険料が計算上所得の30%の保険料となる場合もあります。このような保険料は低所得者には負担できるものではなく、滞納を余儀なくされ国保財政を悪化させるという悪循環に陥り、市町村の財政を一層圧迫しております。抜本的には高齢者などの医療費を抑制するなどの施策が必要ですが、高齢者に対する保険料の上限額引き上げなどにより、未加入者を減らし皆保険を堅持するためにも、低所得者の保険料を協会けんぽ並みの所得の12%未満に軽減されるよう制度の見直しを求めます。

15.助成金申請の全国共通ルール化及び問い合わせに対する回答の統一化を求めます。
 雇用調整助成金の利用を通じて、小規模事業者もさまざまな助成金の利用を検討するきっかけとなりましたが、まだまだ申請の難易度は高くハローワークや労働局への問い合わせが必要不可欠です。
 その難易度を高くしている理由の一つに、都道府県ごとに支給申請時の添付書類の相違、問い合わせ内容に対する回答の相違が挙げられます。具体的には、労働局ごとに独自に求めている書類がチェックリストにあること、支給要領やQ&Aに記載のない事項の解釈が労働局ごとに異なった回答になっています。
 また、問い合わせ内容の回答が労働局ごとで相違があるだけでなく、労働局内の担当者間でも回答が分かれるケースもあります。こうした回答の相違により、都道府県によって支給申請を諦めるケースや申請金額が変わるケース、不支給になるケースもあり、積極的に助成金利用して労務環境を整えようと考える熱意の低下にも繋がります。これらは都道府県ごとで助成金利用の難易度に差が生じることとなり、公平とは言えないのではないかと考えます。

 以上のことから、全国共通ルール化及び問い合わせ内容の回答の統一化を求めます。具体的には、支給申請時のチェックリストは全国共通化したものかつ、例示ケースによって求める場合のある書類を明示していただきたいと思います。
 そして、支給要領やQ&Aに記載のない事項については労働局毎の判断ではなく、本省に確認のうえ統一した見解を回答いただきたいと思います。

16.災害、大規模なシステム障害などの緊急時には、年度更新、算定基礎届などの提出期限延長措置に対応できる制度と運用を求めます。
 災害、大規模なシステム障害など緊急時には、労働保険年度更新、社会保険算定基礎届などの提出期限延長措置に対応できる制度と運用を求めます。昨今、経験した事がない大雨、洪水、台風と言われる災害が頻発しています。
 またサイバー攻撃による企業被害もあとを絶ちません。そういった被害を受けた企業を救済するためにも、上記手続の提出期限延長措置に対応できる制度と運用を求めます。

17.賞与等が雇用保険料及び健康保険料の算定に含まれるのに、給付には反映されない。根拠の説明と徴収される保険料とのバランスを考えた制度を求めます。
 雇用保険料及び健康保険料の徴収額計算において賞与等の金額を含めていますが、失業等給付及び傷病手当金の給付には賞与等の金額を含めない額を計算の根拠としています。
 本来の「保険の原則」や保険事故に対する「生活保障という目的」から鑑みても、保険料の負担と保険金の受給のバランスにおいて著しく不合理な仕組みとなっています。
 このような仕組みとなっている根拠の合理的な説明と賞与等の額を給付金額に反映させるなどの制度の見直しを求めます。

18.障害者雇用率の見直し
 現在、障害者の法定雇用率は民間企業2.3%、国・地方公共団体2.6%、都道府県等の教育委員会2.5%となっております。23年時点で民間の場合43.5名以上の企業が義務化となりますが、中小企業では環境整備に限界があるのが現状です。障害者雇用の促進についての課題は十分に認識していますが、財政的にも業務的にも大企業ほどの力を持っていません。そこで法定雇用率については、大企業の率を高くし、中小企業の率を低くする等の措置を求めます。

19.時間単位有給休暇の上限取得日数の撤廃もしくは上限取得日数を10日まで引き上げる(労働者が希望した場合に限り)ように要望します。
 法律上現在、時間単位有給休暇の上限取得日数は5日ですが、この制度は、特に育児や介護との両立をしているなどワークライフバランスの観点からも、労働者にとって使い勝手がよく、5日では足りないという声が多くあります。本来の趣旨(労働者のリフレッシュのため、有給休暇取得は1日が原則)は理解するところですが、労働者の利便向上のためにも、時間単位有給休暇の上限撤廃、もしくは上限取得日数を10日まで引き上げる(労働者が希望した場合に限り)よう求めます。

IV.金融政策に関する要望

20.政府系金融機関、信用保証協会と商工団体等支援機関との連携強化を求めます。
 政府系金融機関である日本政策金融公庫や信用保証協会は、民間金融機関が扱いづらい事案(創業融資、セーフティネット貸付等)を支援するという大きな役割があります。小規模事業者等に寄り添っている商工団体や会計事務所は、小規模事業者等の財務や事業活動への指導やアドバイスを行うことによって事業の継続や発展に寄与しています。しかしながら、民間金融機関では認められている面談時の同席や説明を政府系金融機関では、認められません。以前は、融資のあっせん屋の排除という時代があったのは認識していますが、経済産業省の認定支援機関制度の創設等、事業者が外部の支援機関に経営について支援を依頼することは日常的になっています。事業者の求めにより面談時の同席と支援者による事業計画や財務報告の説明を認め事業者へのよりよい支援環境の整備へ舵を切ることを求めます。

21.経営者保証を不要とする融資の周知・拡大を求めます。
 事業性や財務内容を評価し経営者保証を不要とする事業性融資には「事業承継において、後継者が抱える不安を軽減」、「事業者の成長意欲が増し、赤字企業の減少や優良企業の増加を促す」、「スタートアップ企業が育ちにくい要因を解消する」などのメリットがあります。
 当団体の会員アンケートでは、法人の61.6%(代表者が60才以上の法人では47.3%)が後継者不在という結果が出ております。中小企業の廃業を防ぎ、日本経済を支える中小企業を増やすためにも事業性融資の拡大は不可欠と考えます。また過度な節税による赤字企業が存在する中で、企業を健全な財務状態に導くことが重要と捉えています。そこで政府より金融機関に対し、「事業者との面談を通じてすべての事業者に対する制度の紹介」、「保証人を不要とすることで貸付金利を上げるなど、保証人の設定を条件とする融資に誘引することを控える」、「無保証人による融資実行に向けた経営指標の目標値示など具体的な説明の実施」など指導の徹底を求めます。

22.コロナ廃業を防ぐための融資制度の周知を求めます。
 ゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎え、今後コロナ廃業の増加が予想されます。未だコロナウィルスの影響が収束しない中で、一時的な業績不振によるコロナ廃業を防ぐためにも借換融資による返済負担の軽減、リスケの実施、リスケ中の必要に応じた追加融資の実行を求めます。
 リスケについては新規の融資が借りづらくなることで踏み切ることができず、手遅れになってしまうケースが少なくありません。それらを防ぐために金融機関に対し、コロナ借換融資制度と新型コロナウィルス感染症特例リスケジュール支援の周知の徹底と両制度に対する積極的な協力を得られるよう指導の徹底を求めます。

23.金融機関における、相続時に必要な各種証明書の発行年月の期間制限に統一性を持たせることを求めます。
 相続時に必要な各種証明書の発行期限について金融機関でバラつきがあるため、統一性を持たせることを求めます。また、法定相続情報証明制度を活用した手続きの迅速化を図ることも合わせて求めます。

24.自己破産や法人の倒産を経営者として経験した人たちが再度、事業を行う際の信用保証制度の利用に関する課題の解消を求めます。
 中小企業、小規模事業者が起業や事業を継続するうえで無くてはならないのが、信用保証制度(保証協会)です。民間金融機関の補完機能として保証協会が役割を果たしているのは、ご承知のとおりです。しかし、個人、法人が法的整理を行った時点で保証協会を利用していた場合、保証協会での情報は協会に永久に保存されております。そのため法的整理を経験したものは10年以上経過しても保証協会を利用することが非常に難しく、現在の事業状況に関係なく、ほとんどの場合、却下されるのが現実です。表向きは、門戸を開いているような対応をしますが、実際は全く違う状況です。中小企業再生支援協議会(現:中小企業活性化協議会)で債務免除を受けた企業・経営者には、資金支援が継続的に行われ、それらの制度が整備される前に法的整理で債務免除がなされた経営者との扱いを別にするのは理解することができません。

 そこで以下の5項目を求めます。
1)過去に法的整理を行った者への現状の対応(制度を利用させない)についての法的根拠と基準の開示を求めます。
2)信用保証協会が所有している情報(保証協会申込時に過去のデータで断ること)が結果として民間金融機関に伝わることに対して、どのように考えているか考えをお聞かせください。
3)審査はあくまでも現事業実態による判断であることを求めます。
4)法的整理を経験したものも平等に再チャレンジする機会が提供されることを求めます。
5)現行法で対応がかなわない場合は、新たな法律の制定を求めます。

V.デジタル化に関する要望

25.IT弱者に対する十分な支援制度を求めます。
 デジタル化社会が日進月歩で進化する中、ITに精通していない人はどんどん取り残されており、非常に危険な状況になっています。ITに精通していない方でも安心してあらゆるサービスが同じように受けられる体制の構築を求めます。

26.小規模事業者等のIT化促進に向けた各種支援制度の拡充を求めます。
 IT化促進に向けた各種補助金はまだまだ利用が難しいのが現実です。小規模事業者目線での支援制度設計や優遇税制の拡充を求めます。

VI.その他の要望

27.宅地建物取引業法の一部改正を求めます。
 大手不動産業者との取引で媒介契約の書面を作成することなく口頭での依頼にとどめ、成立した場合に書面がないことを理由に支払いを拒否するケースが見受けられます。
 媒介業者が小規模事業者の場合、泣き寝入りを余儀なくされているのが現状です。このような優越的地位の乱用を取り締まることができる法律への改正を求めます。まずは、現状の実態を調査する事を強く求めます。

28.相続時における被相続人保有の郵便貯金について、死亡解約の現金引き渡しから、相続人保有の銀行口座への直接振り込みシステムの構築を求めます。
 現状、被相続人が郵便局に保有する貯金については、被相続人が死亡した後、相続人が総合口座を保有していない場合はいったん解約がなされ、相続人に対し、現金で渡すことになっています。これは、相続人にとって現金の搬送リスクが高く、犯罪に見舞われる可能性もあるため、相続時に限っては相続人が保有する銀行口座に上限なく振り込む手続きを構築することを求めます。

29.運送業等(トラック・タクシー)への燃料高騰時のサーチャージ制度導入を求めます。
 安全運行の観点から航空業界のような基準を決め、燃料高騰時のサーチャージ制の導入を求めます。

30.建設業許可申請における事業承継制度(法人成)について改善を求めます。
 建設業許可を個人で取得していた事業者が法人成りで許可の事業承継制度を利用する場合に、社会保険の加入と許可の承継制度において矛盾が発生しています。個人許可を利用して事業譲渡日まで営業した場合、個人営業日に加入している建設国保に継続加入(法人設立後2週間以内の手続きが必要)することができなくなる現状を踏まえ許可申請事項の改善を求めます。

31.円安、原油価格高騰等により中小企業・小規模事業者へのしわ寄せを防止するための監視強化と実態調査及び対策の実施を求めます。
 材料高騰等の影響を受けた下請け事業者へ適切に価格が転嫁されているのか実態調査と監視強化を求めます。

32.建設業許可申請における確認書類を7年へ短縮することを求めます。
 現在、建設業許可申請の際、専任技術者の資格確認において10年以上の実務経験を有する要件にて申請する場合、実務経験証明書に記載した期間(10年間)の契約書類(工事請負契約書・注文書・工事代金請求書等)及び入金確認書類(預貯金通帳写し等)の提出が必要となっています。所得税・法人税等の書類保管義務が最大7年でもあり10年間の保存が難しい状況です。県における建設業許可申請確認書類を 7年に短縮することを求めます。

33.建設業許可通知書等送付について、委任状による委任者への送付を求めます。
 現在、建設業許可申請の承認によって建設業許可通知書及び申請書控えを県より申請者へ送付を行っていますが、委任状による委任者への送付が認められない県があります。全国で委任者への送付が行われることを求めます。

34.認定特定非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)について
 認定NPO法人は税制上の優遇措置で寄付を集めやすくなっていますが、要件のうちの1つに「3,000円以上の寄付を100人以上から集める」というものがあります。同一生計の夫婦がそれぞれ3,000円ずつ寄付した場合、「寄付者本人と生計を一にする者も含めて一人として数える」というルールになっており、夫婦各人が自分の意志で寄付を行っても一人としてしかカウントされません。税制上も社会保険に関してもそれぞれが収入を得、加入しているにも関わらず一人とされてしまいます。
 「広く一般から支持を受けているか」といったことが求められていることは理解いたしますが、成人した各人が、それぞれの考えで判断し、それぞれの収入から寄付されたものを一人としてしかカウントしない制度について早急に改正を求めます。