勁草塾が「パナマ文書の衝撃」をテーマに講演会

去る6月13日、横浜市開港記念館において勁草塾主催の横浜市立大学上村雄彦(うえむらたけひこ)教授による「パナマ文書の衝撃-グローバル・タックスが世界を変える!-」が開催された。

地元神奈川大学の学生はじめ、100名を超える塾生や聴衆は上村教授の熱のこもった講演に万雷の拍手が贈られた。

地元神奈川大学の学生はじめ、100名を超える塾生や聴衆は上村教授の熱のこもった講演に万雷の拍手が贈られた。


 上村教授は加速する環境破壊や深刻な貧困や格差、止まらない紛争など地球規模で危機が迫っている現状を紹介し、もはや一国では解決できない喫緊の課題であり各国が連帯して対処しなくてはならない時代に突入していると解説。しかしながら世界はアメリカ筆頭の新自由主義経済圏は行き過ぎた競争にブレーキを掛けられず、人権・平和を評価されたノーベル平和賞のEUでさえ深刻な経済問題や社会不安をかかえておりそれどころではないのが実情だ。

 そんな八方ふさがりの中、世界を震撼させる情報が世界を駆け巡った。パナマの法律事務所、モサック・フォンセカから漏洩した機密文書いわゆる「パナマ文書」である。データ容量が2.6テラバイト、ファイル数が1150万件という膨大な情報の中にタックスヘイブン(租税回避地)での取引が記録されているというものだ。秘匿されている資金は推定で約30兆ドルとも言われており、日本円で3000兆円もの資金が不当に課税逃れされている可能性が高いことが発覚した。仮に1%の課税で30兆円もの税金が入るにもかかわらず増々広がる格差や貧困をどうとらえたらよいのだろうか。もはや手をこまねいている時ではない。国際的な連帯をもって資金の流れを解明し、適切な課税をすることは当然であり、グローバル社会での富裕者にたいして適切な課税を求めることは地球生命を守るためには必定である。まさしく「グローバル・タックス⇒グローバル化した地球社会を一つの「国」とみなして地球規模で税制を敷く」ことが求められているのである。

 タックス・ヘイブンの資金のかなりの部分はマネーゲームに回っているが、その影響で地カリブ海の島国ハイチなどでは食料価格が高騰し、地元の妊婦らが迷信的に食べる伝統食、「泥のクッキー」でさえ飢えた子どもたちが奪い合うように手にしていたという。「貧乏人はもはや生きていけない」と現地を取材した毎日新聞の記者は報告している。

 世界の温暖化対策や貧困の解消など年間で130兆円の資金が必要とされているが、ODA(政府開発援助)や民間資金ではその30%程度しかまかなえず、巨額の資金不足が生じている。我が国においてもこの資金不足に対して航空券連帯税などの導入が求められているにもかかわらず、財界や財務省は冷ややかな反応を示すばかりだ。しかしながら一刻も早く不公平な資金に課税し、世界の富の適切な再分配を行い地球規模の難題を克服するために、今こそグローバル・タックス、グローバル連帯税の創設が必要と上村教授は指摘している。
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講師紹介(敬省略)
上村雄彦(うえむら・たけひこ)
1965年生まれ。横浜市立大学教授。大阪大学大学院、カールトン大学大学院修了。博士(学術)。国連食糧農業機関、奈良大学、千葉大学を経て、現職。専門は、グローバル政治論、グローバル公共政策論。革新的開発資金に関するリーディング・グループ専門家なども務める。
著書に『グローバル・タックスの可能性』(ミネルヴァ書房)、『グローバル・タックスの構想と射程』などがある。

勁草塾とは・・・
【ティグレ連合会顧問である齋藤勁(さいとうつよし)元内閣官房副長官が主催する政治・経済・社会問題の調査研究団体】

このレポートは講演会の内容と上村教授の編著による『世界の富を再分配する30の方法-グローバル・タックスが世界を変える-』を参照して作成しました。